世界初成功!KDDI研の「NFV/SDN運用自動化」のポイントとは?

KDDI研究所が通信事業者のNFV/SDN導入の鍵となる運用フローの完全自動化試験に成功した。5Gでの実用化を視野に入れ、TM Forumなどで標準化を推進していく考えだ。

通信ネットワークの機能を仮想化して設備・運用コストの低減やサービス開発の迅速化などを可能にするNFV/SDN――。その実用化に向けて通信事業者の取り組みが世界的に進んでいる。しかし、仮想化ネットワークにおける管理・運用面での検討はまだあまり進んでおらず、この分野での技術の確立が商用化を図る上での課題の1つになっているといわれている。

そうしたなか、KDDI研究所は、ベンダー7社と協同で移動通信設備と固定通信設備を共通化したネットワーク仮想化のテストベットを構築し、この試験環境で世界初となる運用フローの完全自動化に成功したと今年5月に発表した。

KDDI研究所では、NFV/SDNの導入をネットワークの運用高度化の契機と捉え、運用の自動化にフォーカスした技術開発を進めているという。今回の実験はその一環として行われたものだ。

複数の仮想網を統合管理NFV/SDNは移動通信のコアネットワーク(EPC)への導入が進められているほか、固定通信やデータセンターではすでに一部商用化されており、宅内機器の機能をネットワーク側で提供するCPEでの活用も進んでいる。

こうした仮想化ネットワークは移動通信、固定通信、データセンターそれぞれで業務内容や運用・管理方法などが異なるため、通常は個別に構築されている。今回構築された試験環境の特徴は、この3分野の仮想化ネットワークの機能を横断的に管理・制御できるようにした点にある。


図表1 KDDI研究所が実施したNFV/SDN実証実験の概要
図表1 KDDI研究所が実施したNFV/SDN実証実験の概要

KDDI研究所でこのプロジェクトを担当する統合コアネットワーク制御グループ グループリーダーの林通秋氏は、こうした試験環境を構築した理由を「1つに統合された仮想化ネットワークを一元的に管理することで、コストの低減や運用の効率化を実現できる。特に移動通信、固定通信、データセンターの事業を1社で行っている事業者にとっては、こうした技術が重要になる」と説明する。

KDDI研究所はこうした運用に対応できる統合管理システム(オーケストレーター)を新たに開発、仮想化基盤とともに今回の実験に提供した。

テストベッドは、この仮想化基盤とオーケストレーターと、各ベンダーから提供された仮想化アプリケーションによって構築され、この上で運用の完全自動化─具体的にはアプリケーションや仮想化基盤などに異常が発生した際に、即座に障害を自動復旧する機能の実証が行われた。今回の実証実験には日本HPもオーケストレーターの提供を行っている(図表2)。

図表2 実験に参加した各社の役割分担

月刊テレコミュニケーション2015年8月号から一部再編集のうえ転載(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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