シスコシステムズは2014年11月13日、東京・六本木の本社内に「IoE Innovation Center Tokyo」を開設した。同センターはこれまでにロンドン、バルセロナ、リオ・デ・ジャネイロ、ソンド(韓国)、ベルリン、トロントに開設されており、東京は7都市目になる。
IoE Innovation Center Tokyoのテープカット。(右から)シスコシステムズ 代表執行役員社長 平井康文氏、米シスコシステムズ インダストリーソリューション エグゼクティブバイスプレジデント 兼 チーフグローバリゼーションオフィサー(CGO) ウィム・エルフリンク氏、東芝 執行役常務 兼 クラウド&ソリューション社 副社長 下辻成佳氏、慶應義塾大学 環境情報学部 大学院政策・メディア研究科委員長 兼 教授 徳田英幸氏 |
米シスコ インダストリーソリューション エグゼクティブバイスプレジデント 兼 チーフグローバリゼーションオフィサー(CGO)のウィム・エルフリンク氏は、「IoEは今後10年間で、世界全体に19兆ドルもの経済価値をもたらす。このうち日本においては、8700億ドルの経済価値が見込まれている」と、シスコによる試算を紹介。IoE Innovation Centerは、こうした莫大な経済価値を、パートナーと協力しながら実際に創出していくための拠点となる。
IoEが日本にもたらす経済価値 |
IoE Innovation Centerの具体的な役割は大きく3つある。まずは「展示」だ。センター内には、シスコと国内のパートナーによるIoEソリューションが展示されている。「ローカルソリューションを展示し、IoEで何が可能かを訪問者に見せる。これをスケーリングすれば、グローバルになる」とエルフリング氏は語ったが、国内のIoEソリューションを広く発信する前線基地の役割を担うわけだ。
2つめの役割は「構築」である。IoEソリューションのプロトタイプ作りのためのR&Dラボが設けられ、顧客企業やスタートアップ企業、大学などのパートナーとのコ・イノベーションを進めていく。
そして、smart-FOAへの出資が先般発表されているが、3つめの役割が「投資」である。
シスコはIoE Innovation Center Tokyoに10年間で2000万ドルの投資を予定しているという。
IoE Innovation Centerの概要 |
記者発表会では、この日にIoT/IoE分野に関する協業について覚書を締結した東芝の執行役常務 兼 クラウド&ソリューション社 副社長を務める下辻成佳氏、慶應義塾大学 環境情報学部 大学院政策・メディア研究科委員長 兼 教授の徳田英幸氏も登場。シスコシステムズ 代表執行役員社長の平井康文氏を交え、パネルディスカッションも行われた。
東芝 クラウド&ソリューション社は、ストレージを核にIoT/IoEに取り組んでいる。下辻氏は「2020年にデータ量は44ZBに増加するといわれているが、ストレージの供給量は7ZBでしかない」と指摘したうえで、「ストレージに蓄えられる前に、処理されて捨てられることになるが、その処理はどこで行われるのか。我々はエッジコンピューティングと言っている」と語った。
クラウドなどに蓄積する前に、デバイスに近いエッジ側で一部の処理を行うのが、エッジコンピューティングの考え方。これは、シスコが提唱する「フォグコンピューティング」ときわめて近いコンセプトであり、それが今回の協業につながったという。
また、徳田氏は、「IoEは1つの会社ではできない。『シスコはファシリテーターとして、いろいろなパートナーとやっていく』という明確なメッセージを出している」と語り、IoE Innovation Centerを中心としたオープンなコ・イノベーションに期待を寄せた。
IoE Innovation Centerの展示の一例。「Connected Cities」や「Connected Healthcare」「Connected Factory」といったテーマごとに展示が行われている |