ファーウェイのNFV戦略「ITと通信の双方に強み。徹底したオープン化で通信事業者のニーズに応える」

NFVを導入する動きが世界の通信事業者の間に広がっている。通信インフラ世界第2位の中国ファーウェイは、中国や欧州の通信事業者がシステムの商用導入を決めるなど、NFV分野で先行するベンダーの1つだ。日本法人でマーケティング&ソリューションセールス本部ソリューションマーケティング部の部長を務める邵禹(シャオ・ユウ)氏に、ファーウェイのNFV戦略を尋ねた。

30以上のPoCを実施、商用導入も決まる

――ファーウェイは、ドコモ以外にも世界の多くの通信事業者と、NFVの実証実験を行っています。

シャオ NFVについては30以上、SDNまで含めると60以上のプロジェクトが動いており、すでに商用化が確定しているケースもあります。

例えば西ヨーロッパでは、昨年、大手通信事業者で実施されたNFVのPoCでファーウェイは唯一のvEPCパートナーに選ばれました。またIMSの分野でも、別の大手通信事業者が年内にファーウェイのvIMSを採用し、VoLTEの商用を開始する予定です。

さらにイギリスでは、大手通信事業者からFusionSphereと仮想化アプリケーションの発注をいただき、年内にデリバリーを終える予定です。

中国でも、主要通信業者各社が強いパートナーシップのもと、NFVソリューションを導入する計画です。

ファーウェイ 邵禹氏

――来年にはもうモバイルネットワークへの商用導入が始まるのですね。ファーウェイのNFVソリューションが次々と受け入れられているのはなぜですか。

シャオ 理由の1つはファーウェイの製品が欧州、中国をはじめ多くの移動体通信事業者にすでに導入実績があり、高い信頼を得ていることにあるのではないでしょうか。

弊社の通信事業者向けソリューション事業はLTEの普及に伴い急速に伸び、2013年には売上高が274億ドルに達し世界2位に位置付けています。その4割が移動体通信分野の製品ですが、近年は基地局だけでなくコアネットワーク(EPC、IMS等)が大きく伸び、現在はトップのシェアを持っています。

まさにここが、今、NFVに置き換わろうとしているのです。弊社のEPCには既に高い競争力がありますが、NFVに対応させ、技術的イノベーションを追及し続けることでさらに多くのお客様のLTE/LTE-Advancedネットワークの導入に貢献できるようになると考えています。

そしてもう1つ、弊社のNFV製品のコンセプトや技術力をご評価いただいている点が挙げられると思います。

――どういう点が評価されているのですか。

シャオ まず弊社がITと通信の双方を手掛けており、通信事業者のニーズにフィットした製品を長期的な視野に立って開発・提供していることがあると思います。

日本ではあまり知られていませんが、ファーウェイはNFVのハードウェア部分を担う汎用サーバーやストレージ製品を幅広い業種の企業でご利用いただいており、中国や欧州を中心としたグローバル市場で高いシェアを持っています。

我々はITと通信の双方のリソースを活かして通信事業者のニーズに応える高いパフォーマンス・信頼性を持つ製品を早期に提供できるのです。

通信系ベンダーの場合は、これらを他のITベンダーから調達しなければなりませんからどうしても限界があります。逆にITベンダーもNFVに力を入れていますが、通信事業者のニーズに十分に応えられない傾向があると思います。その意味でファーウェイは非常に良いポジションにあると考えています。

もう1つ大きな優位性といえるのが、製品をオープンな標準規格に厳密に準拠させているという事です。弊社はNFVの標準化に力を入れており、非常に大きな貢献をしています。

――NFVの標準化はETSI NFVISG(NFV Industry Specification Group)で行われていますね。

シャオ そうです。弊社はNFVISGには早くから参画しNFVの標準化について議論していますし、今年9月に設立されたOpen Platform for NFV Project(OPNFV)の創設メンバー17社の1社でもあります。クラウドの標準化を進めているOpenStackにもゴールドメンバーとして参加しており、すでにOpenStackの中でも2番目となる80以上のドラフトを起草しています。ワーキンググループの副議長を務めるなど人的にも貢献しています。

――他のNFVベンダーも標準準拠をうたっていると思いますが。

シャオ 実際には自社の製品同士の組み合わせでないと使えないケースが意外に多いのです。これに対し弊社の製品では、例えばNFVIのFusionSphereを例に取ると、独自の機能拡張は行っているものの、インターフェースはOpenStackの標準に完全準拠しており、FusionSphereを他社のNFVIに入れ替えても問題なく動作します。機能拡張部分もすべてコミュニティに公開しており、今後も続ける予定です。

NFVの標準アーキテクチャーでは3階層に切られているのですが、多くのベンダーはこれを一体のものとして提供しています。弊社のMANOでは標準通りに実装されており、どの部分もサードパーティのものと組み合わせて使用することができます。

図表2 FusionSphere – OpenStack-based Open Cloud Platform[画像をクリックで拡大]
FusionSphere - OpenStack-based Open Cloud Platform

――オーケストレーターは、通信事業者がNFVを導入する上でコアとなる部分です。ファーウェイのMANO製品の特徴はオープン性にあるわけですか。

シャオ そうです。さらに、それに加えて、通信事業者の要望に応じて非常に柔軟にカスタマイズできることが特徴になると思います。これにより通信事業者は分野毎に最も良い製品を組み合わせて最適なNFVのネットワークを作り上げることが可能になります。

NFVに向けローカルスタッフを強化

――今後、NFVのビジネスをどのように進めていきますか。

シャオ 我々が重視しているポイントの1つがパートナーシップの構築です。通信事業者のネットワークの全てをファーウェイが提供できる訳ではありません。通信事業者にとってマルチベンダー環境を確保することは重要ですから、そのためにもNFVはオープンでなければいけません。お客様との接点作りなどの営業面やサービス開発などもパートナーと協力して進めていきたいと考えています。

来年の「Mobile World Congress 2015」では多くのパートナーと一緒にデモンストレーションを行おうと思っています。

もう1つ我々が重要だと考えているのが、お客様である通信事業者のNFVに対する要望をきちんとお聞きし、対応できる体制を整備することです。そのため、世界各国の拠点、もちろん日本でも、通信とITの双方に強みを持つ人材を募るとともに育成に注力しております。

LTE/LTE-Advancedの時代を迎え、移動体通信ネットワークの姿が大きく変わろうとしています。ファーウェイはこの変化に対応できる体制を整え、次世代の通信事業者のビジネスに貢献していきたいと考えているのです。

>>講演情報
11月26日に開催される通信・放送事業者/ISP・クラウド事業者向け専門イベント「次世代ネットワーク&サービスコンファレンス」に、ファーウェイ・ジャパンが登壇します。

『ネットワーク仮想化の現状と展望』
華為技術日本
ソリューション&マーケティング本部 ソリューションセールスエキスパート
桜井 浩哲 氏

『4Gトレンドとその先への展開』
華為技術日本
ワイヤレス・マーケティング部 担当部長
鹿島 毅 氏

★お申込・詳細はこちらから→ http://www.ric.co.jp/expo/ngns2014/

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