「ワークスタイル変革」という言葉を、以前にも増して頻繁に耳にするようになっている。スマートデバイスやクラウドなどが企業に浸透。ICTを活用したワークスタイル変革に成功する企業が続々と現れていることが背景にあるが、そうしたなかイベント「ワークスタイル変革Day 2014」(主催リックテレコム)が9月4日、東京・御茶ノ水ソラシティで開催された。
第2回目となる今回のワークスタイル変革Dayのテーマは、さらにその先の「新しい働き方」へ――。本格化し始めたワークスタイル変革をさらに前進させるためのポイントや、そのための最先端ソリューションなどが紹介された。
ワークスタイル変革Day 2014の講演会場の模様(写真は日本マイクロソフトの小国氏の講演時) |
「日本が勝っているのは労働時間だけ。生産性を上げないと日本はしんどい」
「これからのビジネスを取り巻く経済動向と企業ICT戦略」と題して基調講演を行ったのは、テレビなどでもお馴染みの慶應義塾大学大学院教授 岸博幸氏だ。
岸氏はまず日本経済の現状について、次のように解説した。「安倍政権は『アベノミクスで日本経済を再生させる』と言っているが、重要な問題は2つに集約される。1つはデフレの克服。これは金融緩和が一番効くが、ほぼ達成しつつあると考えて構わない。日本経済はデフレを脱却し、ノーマルな状態になりつつある」
2つめは、低成長の克服だ。金融緩和や財政出動の効果もあって、大都市や大企業を中心に景況感の改善が見られるものの、岸氏は「今の景気や短期的な良さ。問題は、高い成長率を長期的に続けていく必要があることだ」と指摘。そのうえで、日本が長期的に成長していくためには、ICTによる生産性向上がカギを握るとした。
「長期的な成長率は、簡単に言えば、3つの要因で決まる。1つめは人口だが、残念ながら日本は減っていく。2つめは資本ストック。これについても、人口減少で需要が減り、ましてグローバル化が進んでいるなか、なかなか企業は国内での資本ストックを増やしていかないだろう。そうすると、重要なのが3つめの要因である生産性。これをしっかり高めていかないと、日本はしんどくなる」
慶應義塾大学大学院教授の岸博幸氏。経済産業省の官僚時代は、ICT政策などを担当。また、第1次小泉純一郎内閣の経済財政政策担当大臣だった竹中平蔵氏の大臣補佐官も務めた |
ところが、日本の労働生産性は、他の先進国と比べて、非常に低い水準にとどまっている。岸氏が比較したのは、ブラジルワールドカップでベスト4に残った2つの先進国、ドイツとオランダだ。
「日本は、年間の平均労働時間だけは勝っている。日本がおよそ年間1700時間なのに対して、ドイツとオランダは約1400時間。一方、1人の労働者が1時間当たりに生み出すGDPは日本がおよそ40ドル、ドイツとオランダは約60ドルと日本の1.5倍もある。これが残念ながら日本の現実だ」
そして、岸氏は「イノベーションによって何とか現状を変えていく必要があるが、ICTの導入・活用が決定的に重要になる」と強調。さらに、「今から6年後の2020年、東京でオリンピックが開催される。オリンピックでは、いろいろなビジネスチャンスが生まれる。だからこそ、オリンピックに向けて生産性を上げておかないとチャンスを逃す」と、日本企業は今、ICTに投資する絶好のタイミングを迎えていると訴えた。
ワークスタイル変革をリードするベンダーが講演・展示
基調講演に続いては、日本マイクロソフトの小国幸司氏、シスコシステムズの石原洋介氏、日本IBMの北好雄氏、OKIの丸井武士氏、レコモットの東郷剛氏、テクノバンの半澤直樹氏、日本ユニシスの丸尾和弘氏などが、ワークスタイル変革やユニファイドコミュニケーション(UC)、BYODなどをテーマに講演。これら注目講演の模様は、後日詳細にレポートする予定だ。
また、展示コーナーでは、インターコール・ジャパン、NEC、NTT東日本、沖電気工業、コニカミノルタビジネスソリューションズ、GNネットコムジャパン(Jabra)、住友商事マシネックス、ゼンハイザージャパン、テクノバン、ナレッジスイート、日本IBM、日本マイクロソフト、PhoneAppli、ヤマハ、レノボ・ジャパンの15社が最新ソリューションの紹介を行い、来場者が熱心に説明に耳を傾けていた。
大勢の人でにぎわう展示コーナー |