「モビリティはCEOアジェンダ。“創造的破壊”は事業部長にはできない」
「モビリティが戦略的にきわめて重要」という認識は、企業の経営層にも着実に浸透している。
アクセンチュアが世界13カ国・1475名の企業経営幹部(CIO、CMO、CTOなど)を対象に実施したオンライン調査の結果によると、グローバルでは78%、日本企業では73%の経営幹部が「モビリティへの投資は、自社にとっての戦略投資である」と回答した。
日本およびグローバル企業におけるモバイル戦略の位置づけと投資計画 |
そして、今後2年間でモビリティに1000万ドル以上を投資するとした経営幹部も、グローバルで75%、日本で67%に達している。「これまではトライアルが多かったが、この1年でだいぶ風向きが変わっている。いよいよ企業はモバイルパワーに気づき始めた」と丹羽氏。「モビリティへの投資から得られたリターンは期待通りまたはそれ以上であった」と回答した経営幹部は、グローバルで93%、日本企業で83%に及ぶ。
モビリティ投資へのリターン |
ただその一方で、過去2年間に行った投資から、すでに100%以上のリターンを回収している企業は、日本ではわずか4%、グローバルでも10%にとどまった。これにはいくつか原因があるが、すでに投資を回収している企業には次の特徴があるという。
1つは、全社的なモビリティ戦略を策定していること。そして、CEOがモビリティ戦略に関与していることだ。
デジタル化の推進は、社内にもカニバライゼーションなどの創造的破壊を引き起こす。このとき、部分最適に陥らず、全体最適を考えてモビリティ戦略を推進していくためには、CEOの関与が欠かせないのである。「事業部長が担当すると自分の事業を守ってしまうので、創造的破壊を伴う改革は進められない。モビリティの改革は、CEOアジェンダだ」(丹羽氏)
ところが日本企業の場合、デジタル活用を「CIOマター」と捉える企業の割合が、グローバル企業と比べて高いのが現状となっている。CEOの旗振りの下、創造的破壊を怖れずにモビリティへの取り組み進められるかどうか――。日本企業がモビリティによって飛躍できるかどうかは、この点も重要なカギを握っているようだ。
「デジタル・イノベーションの責任者は?」日本企業はCIOが一番多いのに対し、グローバル企業はCEOが一番多い |