IDC入谷氏「第3のプラットフォームへの投資で出遅れる日本企業」

「企業がイノベーションを起こすために、ITインフラの変革が求められている」――。IDC Japanの入谷光浩氏は2014年4月に行われたA10ネットワークスのプライベートイベント「A10 Forum 2014」で講演し、こう主張した。そこで必要とされるのが、同社の提唱する「第3のプラットフォーム」への移行だ。

SDNの国内市場規模は2017年に800億円規模へ

仮想化のトレンドは今や、サーバーやストレージだけでなく、ネットワークの領域にも及んでいる。「ネットワーク仮想化は『SDN(Software-Defined Network)』の基盤となる技術であり、SDNを導入する企業は増えつつある。SDNによって、アプリケーション配信やロードバランサー、セキュリティなどといった付加価値の付けられるサービスがネットワークに乗せやすくなる」と入谷氏はネットワークを仮想化する意義を解説した。

IDC Japanの調査によると、2014年はSDNの本格的な導入期に入り、市場規模は100億円以上に急成長するという。その後も市場は順調に成長し、2017年には約800億円規模に達すると予測している。

国内SDNエコシステム市場の売上予測
国内SDNエコシステム市場の売上予測

また、IDCは、「Software-Defined Infrastructure」(SDI)という概念を提唱している。このSDIとは、SDNコントロールプラットフォームとクラウドオーケストレータというソフトウェアベースの管理プラットフォームによってインフラ全体の運用管理を一元化するというもの。「SDIにおいて重要なのはオープンアーキテクチャを採用すること。それによってインフラにネットワークサービスやセキュリティなどといった付加価値のあるサービスを簡単に組み込むことができるようになる」

SDI(Software-Defined Infrastructure)の概要図
SDI(Software-Defined Infrastructure)の概要図

ITインフラ変革を実現するための5つのポイント

最後に入谷氏は、ITインフラ変革の実現に向けて実行すべきこととして5つのポイントを挙げた。

1つはITインフラの戦略を考えること。ソフトウェアを起点とした統合的なコントロールと管理を行えるインフラを考えるべきだという。2つめはIT部門の組織と役割の改革。社内のサービスプロバイダーとなり、より質の高いITサービスを事業部門に提供することである。

3つめはユーザー満足度を向上させるための仕組みづくり。アプリケーションやデータが増えたことで、「使いにくい」といった声を挙がってからアクションを開始するようでは、ユーザー満足度は上がらない。IT部門が事前に察知できるような仕組みづくりが必要となる。

4つめはハイブリッドクラウドの実現。様々なクラウドサービスが利用されていくなかで相互運用性の高いオープンなクラウドアーキテクチャーを採用することが重要となる。クラウド間の垣根をなくしたハイブリッドクラウドを実現することが求められている。

最後は積極的な先行投資。日本企業のネットワークへの投資は年々増えてきている。だが、SDNなどの第3のプラットフォームへの投資は他国よりも少ない。2006年を第3のプラットフォームへの起点として2020年を終点とすれば、今は折り返し地点。立ち止まっている時間はない。

「新しいビジネスモデル、新しいITに追従していくために、今から戦略的な投資を行っていくことが重要だ」。入谷氏はこう話し、演壇を降りた。

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