iOS 7によりMDMが高度化 運用コストは飛躍的に軽減
それでは具体的に、iOS 7によって、MDM、MAM、MCMのそれぞれがどのように機能強化されたのか紹介していこう。なお、紹介する機能の一部は、国内では提供開始されていないものも存在するので、注意をお願いしたい。
MDMサービスは、スマートデバイスの管理・運用のための基盤サービスであり、「盗難・紛失対策」「利用状況の把握」「ITポリシーの設定」の3つの機能を主に提供する。
一般的にMDMサービスと聞くと、どうしてもリモートロックやリモートワイプなどの盗難・紛失対策に目が向きがちだが、スマートデバイスの導入目的を達成するためには、利用状況の把握・改善のサイクルを素早く回す必要があり、カメラアプリやSafariの利用を遠隔で制限する「ITポリシーの設定」や、インストールされたアプリや通信状況などを取得する「利用状況の把握」が重要な機能となる。
現在では、「スマートデバイスのビジネス利用にはM DMサービスが必須」という認識が定着しつつあり、数多くの企業が導入を進めている(図表4)。
図表4 MDMを実践している主な企業・団体 |
以下、iOS 7 で新たに搭載されたMDM関連機能の中から、主要なものを紹介する。
MDM 構成プロファイルの削除抑制
iOS 6までは、各デバイスに設定されたMDM構成プロファイルを、ユーザーの判断で削除できる仕様となっていた(図表5の左のように、エンドユーザーが削除できる)。ユーザーから主導権を奪わないスマートなポリシーにも見えるが、ビジネスでスマートデバイスを運用する側からすれば、せっかく設定したMDM構成プロファイルをユーザーに勝手に削除されてしまっては、管理者は運用を維持するだけでも大変な手間が必要となる。
図表5 MDM構成プロファイルの削除抑制 |
そこでiOS 7では、MDM構成プロファイルをユーザー側の判断で勝手に削除できないよう、制限を加えられるようになった。これによって、管理対象のデバイスを確実にMDMの配下に置くことができ、より確実な運用が可能になる。
MDM適用範囲の拡大
iOS 7では、MDMサービスから設定できる項目の範囲が、iOS 6より広くなった。特に、ネットワーク関連の設定項目として新たに、「WiFi Hotspot2.0」「AirPrint」「AirPlay」の設定を、MDMサービスを通じてリモート配布できるようになった(図表6)。
図表6 MDMサービスからの適用範囲の拡大 |
今までは、iPhone/iPadのWiFi Hotspot2.0 接続を設定するには、SSIDやパスワードをいちいち入力する必要があるため、ITリテラシーの低いユーザーにとってはハードルが高い面があった。
しかし、iOS 7 なら、これらの設定を管理者から各デバイスに事前に配布しておくことが可能となり、ユーザーによる設定入力が不要になるため、ITリテラシーの低いユーザーでも簡単にWiFiを利用できるようになる。管理者にとってもWiFi Hotspotの利用設定を配布できるため、通信コストの抑制など非常に利便性の高い設定項目だと言える。
導入作業を大幅に省力化
iOS 7のアップデートで最も大きな強化ポイントとなるのが、「Streamlined Device Enrollment」と呼ばれる新機能だ。これを利用すると、購入したデバイスは開封前に「Enrollment Service」に登録され、MDMサービスを事前に関連付けておくことで、MDMサービスへの登録作業を一連のアクティベーション作業の中に含めることができる(図表7)。
図表7 Streamlined Device Entollmentの利用イメージ |
新規に購入したデバイスをMDMサービスの管理下へ配置する作業を自動化できるため、MDMサービスへの登録のための各種作業が大幅に省力化される。
また、CLOMO MDMを利用し、MDM管理下に登録後の各種設定を自動化することで、ほぼすべての初期導入作業を自動化することも可能になる(ただし、本機能は未だ提供開始されていないため、仕様が変更される可能性もある)。
次回は引き続き、MAMとMCMに関連する強化機能を紹介する。