社内SNSの正しい使い方はリーン・スタートアップで見つけよう
さて、ここまで社内SNSという道具の特徴や、期待できる効果などを見てきた。今一度、整理してみると、社内SNSの代表的な導入目的としては、ナレッジの共有や社員同士のつながり強化、非効率なメールや会議の代替によるワークスタイル変革などが挙げられる。
社内SNS導入の目的と狙い(出典:ソニックガーデン) |
ただ、このレベルではまだ「導入目的が明確」と言うことはできない。つまり、まだ社内SNSの導入に失敗する可能性は大だ。社内SNSという道具を使って、自社のどのような課題を解決するのか――。自社の企業風土や業務プロセスなどと照らし合わせながら、さらに具体的に詰めていく必要がある。
そのための方法論として、ソニックガーデンの藤原士朗氏が勧めるのは、小さく始めて、短いサイクルでPDCAを回していく「リーン・スタートアップ」だ(関連コンテンツ)。
例えば、ナレッジ共有の強化と効率化を目的に、社内SNSの導入を検討しているとしよう。では、どこに適用すればいいのか。その必要性・ニーズが大きく、社内SNSという道具がマッチしているのは、全国の店舗・拠点と本部間なのか、組織横断プロジェクトのメンバー間なのか、営業と開発現場間なのか、それとも社外パートナーとの間なのか――。事前に入念に検討してみたところで、本当のところは、実際に社内SNSを導入してみないと分からない。
だから、リーン・スタートアップでは、まず小さく始めてみることが推奨される。そして、最初に立てた仮説が間違っているようなら方向転換し、期待する成果が出れば、その方向で社内SNSの展開を拡大していく。仮説検証を短く繰り返しながら、正解を探していくというのが、リーン・スタートアップの方法論である。ソニックガーデンの藤原氏は、「誰が情報共有や社内の人脈形成に困っているのかを探索しながら、少しずつ仮説検証を進めていくことが、成功に辿り着く唯一の道」とさえ言う。
このリーン・スタートアップの対極に位置するのは、いきなりの全社展開である。社内SNSの導入コストは安価、使い方もFacebookなどで慣れている従業員が多く、すぐにSaaSで始められる。このため、テスト運用などをほとんどせずに、トップダウンでいきなり全社展開してしまう企業もあるが、これは社内SNSの導入が失敗する典型的なパターンだ。
ソニックガーデンが推奨するSNS運営における全体の流れ(出典:ソニックガーデン) |
繰り返しになるが、「社内SNSという道具さえ従業員に配れば、成果が出る」と期待するのは禁物である。社内SNSを何のために使うのか。その目的を明確にしてこそ、社内SNSは力を発揮する。目的を明確に説明できないようでは、経営層や従業員たちからの支持も得られない。そして、自社の課題に合った社内SNSの正しい使い方は、小さく始めて実際に試しながら見つけていくのが、最も効率的である。
次回の後編では、社内SNS導入で失敗しないためのポイントをさらに紹介していくほか、数多くのベンダーから提供されている社内SNSの選び方についても解説する。