総務省は2010年6月25日、携帯端末向けマルチメディア放送の開設計画に関する公開説明会を開催した。
携帯端末向けマルチメディア放送は、テレビのアナログ放送が停波するのに伴い空白となるVHF帯(207.5~222MHzの14.5MHz)を利用するサービス。14.5MHzと周波数の帯域幅が限られている中で、多様な放送事業者の参入を可能とする観点から受託放送・委託放送制度(ハード・ソフト分離制度)を活用している。
このうち受託放送事業者については、NTTドコモやフジテレビジョン、電通など10社が名を連ね、「ISDB-TMM」規格を採用する「マルチメディア放送」(mmbi)と、KDDIと米クアルコムが共同で設立し、「MediaFLO」規格を採用する「メディアフロージャパン企画」の2社の争いとなっている。
今回の説明会は、両社が提出した受託放送開設計画の認定書を基に実施されたもので、第1部では2社の代表が15分ずつプレゼンテーションを行った。
mmbiの計画内容は「サービス開始当初から駅カバー率50%超」「開始2年以内で道路施設カバー率50%超」「2015年度末に特定基地局125局を建設、2016~18年度にも毎年25局程度の増設」などとなっている。同社代表取締役社長の二木治成氏が「アピールしたいポイントの1つ」として強調したのが、「対応端末の普及」だ。それによると、「早期立ち上げのために携帯電話への搭載に力点を置き、ドコモとソフトバンクモバイルからすでに意思決定を得ている」という。携帯電話以外に各種の情報機器端末への搭載も基本方針としており、開始5年目で累計5000万台の出荷を見込んでいる。
一方、メディアフロージャパン企画は、「2015年度末までに屋外受信は全国世帯カバー率95%、屋内受信は同90%」「駅カバー率は2011年度末52%、道路施設カバー率は2013年度末65%」「2015年度末に特定基地局865局を建設」「全キゃリアの携帯電話端末およびその他端末が普及対象で、2020年度に対応端末普及想定7000万台」などを計画している。同社代表取締役社長の増田和彦氏は「米国では07年から商用サービスが始まっている。国内でも08年から沖縄のユビキタス特区で実証実験を行っており、商用レベルに近い実験が完了している」とアピールした。
公開説明会にはNTTドコモの山田隆持社長、KDDIの小野寺正会長兼社長も出席した |
第2部では、両社の間で質疑応答が行われた。
メディアフロージャパン企画はmmbiに対し、「基地局の数が125局というのは少なすぎるのではないか」と指摘した。mmbi側は「フジテレビの地上デジタル放送技術でシミュレーションした」と回答したが、増田氏は「地上デジタルのワンセグ放送では品質が厳しいのではないか」と述べた。
mmbiからメディアフロージャパン企画に対しては、「対応端末の普及台数は予測にすぎないのではないか」との疑問が投げかけられた。これに対し、KDDI代表取締役社長兼会長の小野寺正氏は「MediaFLOはすでに端末が出ており、米国ではサービスが始まっている。受託事業者が1社に決まればそれを皆が使わざるを得ない」と反論した。
総務省では、早ければ7月にもこの2社の中から受託放送事業者を決定すると見られる。