「5G市場の伸びがスローな理由として、ローカル5Gに対するニーズが小さいというより、5Gの主要なユースケースである、いわゆるOTの領域でローカル5Gを必要とするようなDXの展開に想定より時間がかかっていることの方が大きい気がしている」
こう語るのはIDC Japan Software&Services リサーチマネージャーの小野陽子氏だ。実証フェーズから普及フェーズに入ったローカル5G。その背景には、最大の課題と指摘されてきたコストの低廉化がある。
IDC Japan Software&Services リサーチマネージャー 小野陽子氏
例えばNTT東日本は、月額30万円台で利用可能なサブスク型のマネージドローカル5Gサービス「ギガらく5G」を2022年から提供している。同社 ビジネス開発本部 無線&IoTビジネス部 5G/IoT企画担当 担当課長の大石卓哉氏は、「今年に入ってからお客様の本気度を感じる。間もなく“夜明け”が来るという実感を持っている」と話す。
また、ローカル5Gシステムの構築に必要な機器がすべて揃った「ローカル5Gパック」を398万円で今年3月に提供し始めたNECでデジタルネットワーク統括部 ディレクターを務める坂本洋介氏も「着実に裾野は広がっている」と言う。
NEC デジタルネットワーク統括部 ディレクター 坂本洋介氏
ただし、「当初の期待よりも、1桁近く導入事例が少ない」(坂本氏)のが現状であり、かつIDC Japanの小野氏が「スロー」と表現した通り、遅れていた市場拡大を取り戻すような勢いが出てきたとも言えない。
なぜ、コストは下がってきたのに、普及スピードは加速しないのか。OTなどのデジタルエンジニアリングのレイヤーもウォッチしているという小野氏は、その原因の1つとして、ローカル5Gの主要なユースケースである産業DX側の事情を挙げたわけだ。
しかし、これはローカル5Gを提供する側が傍観しているほかないという話ではない。ユースケース開拓に、これまで以上に注力していくことが重要ということだ。