6Gは「感じて、考えて、行動するネットワーク」へ
――ノキアでは、6G時代のネットワークのビジョンをどのように描いていますか。
加茂下 6G時代のネットワークは、AIやクラウドの力を借りて、「感じて、考えて、行動するネットワーク」になっていくとノキアでは考えています。例えばエッジクラウドにおいては、ネットワークやセンサーで感じたものを、AIが判断し、すぐにフィードバックしていくことが必要なアプリケーション/サービスが出てくると見ており、こうしたことをきちんと実行できるネットワークが必要になってきます。
また、ネットワーク運用の面でも、故障の兆しをデータから感じ、AIで分析して自動で未然予防していくことが求められていきます。
そして、こうした「感じて、考えて、行動するネットワーク」を実現していくにあたって大きなテーマの1つとなるのが、ネットワークの品質を高めるだけではなく、ネットワークをいかに収益化していくのか─そのバランスを取っていくことです。ノキアはこれに貢献するソリューションやテクノロジーを提供していきますが、収益化についてはネットワークAPIを積極的に推し進めていきます。
APIを介して、ネットワークの機能を柔軟・機敏・スケーラブルに変えられないと、ネットワークの収益化はなかなか難しいと思っているからです。
CPaaS(Communications Platform as a Service)事業者などが、ネットワークAPIを利用して新サービスを提供できるようになれば、通信事業者にとっても新たな収益となり、ネットワークへの投資を回収していくことができます。
――ネットワークAPIとは、通信事業者の網側の各種機能を利用したり、ネットワークに対して必要な性能を伝えたり、欲しい情報をネットワークから取得したりするためのAPIですね。5Gコアネットワーク(5GC)には「Network Exposure Function(NEF)」という仕組みが用意されており、ネットワーク機能を外部に公開できます。
加茂下 ノキアでは、このネットワークAPIを抽象化し、アプリケーション開発者が通信事業者のネットワーク機能を容易に利用できるようにするAPIプラットフォーム「Network as Code」を提供しています。
APIを使ってネットワークの収益化を図ろうと考えている通信事業者は多く、ノキアはすでに仏オレンジ、トルコのタークセル、スペインのテレフォニカとAPIビジネスのエコシステムを一緒に作り上げていく契約を結んでいます。
ネットワークAPIが必要な時代が来た
――通信事業者の網側にある課金や認証、QoS制御などの機能を第三者に開放するというアイデアは、それこそ2008年にスタートしたNGNの頃にはあったかと思います。一部ベンダーが積極的に提案してきたものの、普及することはなかったわけですが、当時と現在ではどのような状況の違いがありますか。
加茂下 6Gを見据えて今、オープン化が大切なキーワードになっています。
無線の領域においてもOpen RANだったりCloud RANだったり、これまでバーティカル(垂直統合)で構築してきた無線インフラが、ホリゾンタル(水平分離)になってきています。このようにネットワークを開放する方向性が非常に強くなってきているなか、ネットワーク機能もAPIで開放する時機を迎えているのだと思います。加えて、APIでネットワーク機能を開放し、新しいアプリケーション、新しいサービスをどんどん発掘していかないと、ネットワークの収益化が図れないという事情もあります。APIを備えたネットワークが必要な時代がやって来ました。
――ネットワークAPIの市場規模は2030年にグローバルで340億ドルに達し、日本でも2500億円以上が見込まれるという予測があるそうですね。外部のサービスプロバイダーが、通信事業者のネットワーク機能をAPI経由で利用するメリットは何でしょうか。
加茂下 課金機能だったり、デバイスの識別情報や位置情報などを利用したアプリケーション/サービスを柔軟かつ迅速に開発して提供できることが、大きなメリットになると考えています。