BYODが単なるブームで終わらない理由
だがその一方で両社の調査は、日本ではまだ約7割という大多数がBYODに踏み切っていない事実も浮き彫りにしている。
しかも、アルバネットワークス システムエンジニアリング部 コンサルティングエンジニアの池田豊氏によれば、「BYODブーム」と言っていいほどのメディアなどでの状況と、そうした7割に及ぶBYODに消極的な企業との間には、「大きな温度差がある」のが実態だという。
「スマートデバイスの企業導入は日本でもかなり増えてきているが、ほとんどの企業はまだBYODには積極的ではない。『個人所有デバイスの社内ネットワークへの接続を防ぎたい』というニーズのほうが現状では多い」と池田氏は証言する。
アルバネットワークス システムエンジニアリング部 コンサルティングエンジニア 池田豊氏 |
冒頭で大企業でのノートPCの持ち出し禁止について触れたが、一部の先進企業やそもそもセキュリティポリシーのない中小企業などを除けば、まだまだやはりBYODに慎重な企業が多数派なのである。「BYODについては検討予定すらない」「ポリシーで明確に禁止されている」など、BYODに否定的な声は大企業を中心にいくらでも聞くことができる。
とはいえ、BYODは単なるブームで終わりそうにはない。こうしたユーザー企業のBYODに対する消極的な実態を知る業界関係者の多くも、「それでもBYODの流れは止まらない」と見る。
その1つの証左として紹介したいのが、トレンドマイクロが6月29日に発表し調査結果だ。これは日本を対象に実施されたものだが、ポリシーやルールでBYODが禁止されている企業に勤める従業員の半数以上が、BYODの経験が「ある」と答えたという(関連記事)。
図表 ポリシーやルールでBYODを禁止している企業におけるBYODの経験(N=440) |
BYOD禁止企業でも、実に半数以上の社員がBYOD経験が「ある」と答えた(出典:トレンドマイクロ) |
現在、企業ITの世界で起きている大きなトレンドに「ITコンシューマライゼーション(企業ITのコンシューマ化)」がある。BYODもその支流の1つになるわけだが、このITコンシューマライゼーションとは「企業ITの民主化」とも言い換えられる。スマートデバイスやクラウドなどのITを誰でも容易に活用できるようになった今、もはやIT部門が従来と同じやり方で企業ITをガバナンスしていくことは困難になっているのである。
前出のジュニパーの調査によれば、日本のIT部門の意思決定者の42%はBYODの導入を求める声を感じているという。また、企業上層部からの要請があると答えた人は37%、従業員からの要請があると答えた人は25%に上った。こうしたエンドユーザーの声に対して、具体的な手を打たないと何が起こるのか。それは“なし崩し的”なBYODの開放であるが、これはトレンドマイクロの調査からも明らかなように、すでに現実のものとなっている。
BYODを推進するにせよ、BYODを禁止するにせよ、確固たる策を打つことがIT部門にとって急務となっているのである。
では、求められるBYOD対策とは何か――。それを知るうえでは、BYODに固有の特徴をまず理解することが大切になる。
個人所有と会社支給の端末では、セキュリティ面や運用面で一体どのような違いが生まれるのか。次回は、しばしば混乱して捉えられがちなBYODの特質について見ていきたい。
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