江﨑東大教授に聞く生成AI時代のデータセンター「生成AIでオンプレミス加速 これから景色が変わり始める」

生成AIの普及が加速するなか、データセンターはどこへ向かうのか。インターネット業界やデータセンター業界を長年リードしてきた東京大学の江﨑教授は、「ここ5年くらいで状況は大変ドラスティックに変化していく」と見通す。オンプレミス向けデータセンターの復権、データセンターの地方分散、IOWNまで、縦横無尽に江﨑教授が語った。

東京大学 教授 江﨑浩氏

東京大学 教授 江﨑浩氏

生成AI登場でオンプレミス回帰

――生成AIが登場し、データセンターの重要性がますます高まっています。

江﨑 生成AIは2つのディレクションを持っています。ものすごく大規模なデータセンターで動かしていく方向と、エッジで動かしていく方向の2つです。

これからはエッジ、つまりオンプレミスが大変な勢いで加速していくことになるでしょう。

なぜなら、パブリッククラウドに企業の機密情報を置くことは、残念ながら難しいからです。生成AIの有効性の高さが広く認識され、センシティブなデータを生成AIに学習させたいというニーズが急拡大しています。ジャイアントプレイヤーは「ユーザーから預かった情報は読みません」と言いますが、事故もありますから信用するわけにはいきません。

加えて、OpenAIやグーグルなどが開発する巨大なLLMを利用しなくても、比較的小さなサイズのLLMを自前で開発できることも分かってきました。

そこで、オンプレミスで生成AIを動かそうという方向へ振れてきたと観測しています。

――米マイクロソフトが今年4月、日本国内のAIおよびクラウド基盤の増強に今後2年間で約4400億円の投資を行うと明らかにするなど、パブリッククラウド事業者による大規模投資が相次いで発表されていますが、そうした方向性だけではないということですね。

江﨑 もちろんジャイアントプレイヤーのクラウドは今後も増えていきます。ただその一方で、クリティカルな情報に関してはプライベートクラウドと、ハイブリッドな使い方になっていくでしょう。

パブリッククラウドの利用を積極的に進めていくなか、多くの企業は価格面や可用性などで課題も経験しました。そこで「オンプレミスに戻ろう」という動きが起きていたところに、ちょうど登場したのが生成AIです。

さらに、インテルが生成AIの能力をPCにどんどん搭載していくなど、本当のエッジステーションでも生成AIを活用した軽めのアプリケーションが動いていきますから、ここ5年くらいで状況は大変ドラスティックに変化していくと思っています。

続きのページは、会員の方のみ閲覧していただけます。

江﨑浩(えさき・ひろし)氏

東京大学大学院情報理工学系研究科教授。1987年九州大学工学部電子工学科修士課程修了。同年4月東芝に入社。1990年米国ベルコア社、
1994年コロンビア大学にて客員研究員。1998年10月東京大学大型計算機センター助教授、2001年4月東京大学情報理工学系研究科助教授などを経て現職。WIDEプロジェクト代表、東大グリーンICTプロジェクト代表、MPLS JAPAN代表、JPNIC理事長、日本データセンター協会 副理事長兼運営委員長などを務める。工学博士(東京大学)

RELATED ARTICLE関連記事

SPECIAL TOPICスペシャルトピック

スペシャルトピック一覧

NEW ARTICLES新着記事

記事一覧

FEATURE特集

WHITE PAPERホワイトペーパー

ホワイトペーパー一覧
×
無料会員登録

無料会員登録をすると、本サイトのすべての記事を閲覧いただけます。
また、最新記事やイベント・セミナーの情報など、ビジネスに役立つ情報を掲載したメールマガジンをお届けいたします。