そこでIBMは、米国本社に本社機能を集中させた「1国最適型」から、本社機能を各国に移譲する「各国最適型」へと組織形態を変更。各国のマーケットの変化にスピーディに対応できるようにした。
IBMはグローバル化に対応するため、このように組織を変えてきた |
だが、この「各国最適型」もグローバリゼーションがスピードアップするなか、やがて限界を迎える。「地球上のどこかで起きた出来事が瞬時に世界中に広がりマジョリティになる規模感とスピード感。それに我々は付いていけなくなり、IBMの株価は1年経たないうちに半分以下になってしまった」
この危機を乗り越えるために、IBMが辿り着いたのが「世界最適型」の組織である。国家という枠組みの中で各現地法人が仕事をしていくのではなく、世界約170カ国に分散するIBM社員が「One IBM」としてスピーディに動いていくための組織形態だ。
現在IBMでは、各現地法人ごとに間接部門などを持ってはいない。例えば経理・財務は世界17カ所、人事は11カ所といったように、各機能を全世界に最適配置。各国に分散したIBM現地法人が、まるで1つの会社のように動いている。「例えば私の交通費は大連のスタッフがチェックする」。IBMは国家という枠組みを超えた組織形態へと辿り着いたのである。
「世界最適型」の組織へと移行したIBMでは、経理・財務や人事などの間接部門をこのように配置している。赤い点線で囲んであるのが日本法人向けにシェアードサービスを提供している主要拠点 |
スピードアップの“要”はUCの活用
このようにグローバリゼーションへの対応を進めてきたIBMであるが、それを支える“要”となっているのがコミュニケーション基盤だ。One IBMを実現するには、世界中に分散して働く社員がコラボレーションするためのコミュニケーション基盤が不可欠だ。なかでもスピードアップに大きく貢献しているのがユニファイドコミュニケーション(UC)だという。
IBM社内で普段使われているコミュニケーション基盤。UCツールであるIBM Sametimeは、IMや在席情報、オンライン会議などの機能を有している。もちろんモバイルでも利用可能だ |
北氏はコミュニケーションの成立要件として、「時間」「場所」「情報」の3つの共有を挙げる。コミュニケーション基盤の役割は、これら3つのどれかが欠けたときに補うことだが、「時間」が共有されているときのコミュニケーション補完手段としては、UCが最も優れているという。IBMでは「IBM Sametime」というUCソリューションを提供しており、もちろん同社内においてもOne IBMに必須のコミュニケーション基盤として活躍している。
「グローバリゼーションでは、スピードがキーポイントになる。そして、企業がスピードアップするための基盤になるのは、やはりコミュニケーション」――。海外展開する企業にとって、UCの重要性がますます高まっていくことは間違いなさそうだ。