ソフトバンク、米AI医療ベンチャーと合弁企業設立「がん患者50%のデータを集める」

ソフトバンクグループが、米国の医療AI企業との合弁会社設立を発表した。父親をがんで亡くした経験から「病による悲しみを減らしたい」と語る孫正義氏がAI活用で構想する医療の未来とは。

ソフトバンクグループは2024年6月27日、AIによる医療サービスを提供する米国・TEMPUS(テンパス)と合弁でジョイントベンチャー「SB TEMPUS」を設立し、8月1日に事業を開始すると発表した。

ソフトバンクグループ 代表取締役 会長兼社長執行役員の孫正義氏

ソフトバンクグループ 代表取締役 会長兼社長執行役員の孫正義氏

TEMPUSはグルーポンを創業したEric Lefkofsky氏が2015年に米シカゴで創業。遺伝子データ、電子カルテのデータなどのマルチモーダルなデータをAIで分析し、個人に合った医療を提供する。

記者会見に登壇したソフトバンクグループ 代表取締役 会長兼社長執行役員の孫正義氏は、実父を肺がんで亡くした経験を語り、「病による悲しみ、死による悲しみを減らしたいという思いで、メディカルAGI(Artificial General Intelligence:人工汎用知能)をやるための会社を探した」と続けた。

遺伝子検査、医療データ解析、治療選択肢レコメンドがサービスの3本柱

TEMPUSは、米国ですでに2000もの病院にサービスを提供している。展開するサービスは次の3つだ。まず、遺伝子検査である。がんは遺伝子の突然変異によって起こる病気であり、ゲノム解析を行うことで1人1人の患者それぞれのがんの特性を判断することができる。

TEMPUSが提供する3サービス

TEMPUSが提供する3サービス

2つめは、データ収集と解析だ。 孫氏は「遺伝子検査だけならやっている会社がある」と言い、TEMPUSの特徴は遺伝子データのほか、電子カルテ、病理データ、MRIなどの画像データといったマルチモーダルな医療データを複合し、解析できることにあると強調した。

TEMPUSでは、データの匿名化と整形をアダプターで行うため、病院は現在運用している電子カルテ等のシステムをそのまま使いながら、TEMPUSのAIデータベースとのデータ連携が行えるという。病院はこのデータ連携により、リアルタイムに解析結果を治療や研究開発に用いることができるとのことだ。

TEMPUSによるデータ収集・解析

TEMPUSによるデータ収集・解析

3つめはAI解析による治療レコメンドだ。AIが医療データを解析するだけでなく、最適な治療法まで提示する。治療法の選択肢には治験など開発中のプログラムも含むとしている。

米国では、ゲノム解析のみでは27%のがん患者にしか個別最適な治療法を提示できないのに対し、TEMPUSは96%の患者に提示できるという。

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