2012年度に数千台規模のスマートフォン/タブレット端末の導入を計画している企業の案件が進んでいる――。多くのMDMベンダーの担当者がそう語るように、2011年度内にテスト導入と検証を進めていた企業がいよいよ大規模運用をスタートする。
こうしたケースではリスク対策はもちろん、管理の効率性やMDMのスケーラビリティが追求される。つまり、第1回でMDMの主要3機能と述べたうちの(2)業務外・不正使用の禁止(デバイス制御)と(3)端末・アプリ管理の効率化の“質”と“幅の広さ”だ。
これらの機能はMDMの核となるものであり、どのMDMも備えているが、コンソール画面の構成や操作性、階層型管理の可否、管理できる台数といった部分も含めて、その質、つまり使い勝手が問われることになる。
また、多数の端末に業務アプリを展開し、バージョンアップやファイルの更新を実行する機能も不可欠になる。数百台・数千台規模の場合にこれを人手で行うのは事実上不可能だ。MDMベンダーは、こうした業務アプリの管理機能の拡充に注力しており、MDMの機能の幅がどんどん広がっている。
現状では、まだアプリ配信/インストール機能を備えていないMDMソフトやサービスもあるが、そうしたベンダーは真っ先にそれを課題に挙げる。そこからも、ユーザー企業のニーズの高さがわかる。
管理負荷を軽減する工夫
この管理の効率性の部分で何がユーザーの評価を得ているのか。具体的にMDMベンダーの差別化ポイントを見ていこう。
中小企業を主要なターゲットとしてMDM「パラディオン」を販売している日本システムウエア(NSW)は、画面構成と操作性を重視している。
プロダクトソリューション事業本部エンベデッドソリューション事業部部長の小笠原常雅氏は「ホーム画面からすべての機能を利用できるよう設計しており、管理者に優しい操作性がスマートフォン導入企業から評価されている。また、BYODへの対応や会社の組織構造に合わせてツリー型の三階層で資産管理できることも特徴」と話す。
同社のパラディオンでは、異常の発生を示すアラート情報をホーム画面にまとめて表示するなど、管理者の効率を重視した画面を設計。また、MDM機能だけでなく、資産管理機能の拡充にも注力している。
AXSEEDが提供しているAndroid向けMDM「SPPM for Android」も、ホーム画面に各社員の端末の状態を示すアイコンを表示。アラート情報やステータスの変化を赤や黄色のアイコンで示す。管理者はホーム画面を見ているだけで全体状況をある程度把握できる。端末台数が増えれば増えるほど、こうした画面設計が管理者の利便性に直結するようになる。
インヴェンティットの「MobiConnect for Business」は、管理者の権限を細かく設定できる点が評価されているという。例えば、支社の管理者には、実行できる機能を制限した管理者権限を与えることができる。同社・営業本部営業部長兼プロダクト担当の半田寛之氏は、「リモートロックだけ実行できる管理者の権限を社員に与えることも可能。管理者がいないときに、端末を紛失した社員が自分でロックをかけられる。中小企業で評判がいい」と話す。
また、管理者の負荷を軽減したり、専門の情報システム担当者がいない企業をサポートする目的で、MDMの運用代行サービスを提供する例も出てきている。「STAR-MDM」を提供しているスターネットは、10月から「STAR-MDM運用代行サービス」を開始した。365日24時間、電話にてリモートロック作業を受け付けるものだ。
端末の紛失は夜間に発生することが多く、無くしたことに気づいても、対応できる管理者がいないことも多い。休日・夜間でもスターネットのサポート員が対応することで、万一の際の情報漏えいを防止する。