IOWNの「1人1波長」が現実に
特徴は大きく3つ。第1が低遅延性だ。屈折率(真空を1とする)が低いため、光の走行速度が非常に速い。
ガラスコアの屈折率は1.4以上であるのに対し、空気は1.0。図表2のように、遅延に関して4~5割の改善が見込める。金融の高速取引等のほか、「触覚を伝送するハプティクス通信や遠隔手術、自動運転など、遅延要求の厳しいアプリケーションに極めて有効だ」(山中氏)。
図表2 空孔コアファイバーによる遅延特性の改善度
第2は、ハイパワーの光を入力・伝送できることだ。古河電工 研究開発本部 フォトニクス研究所 光線路開発部 光線路開発課 課長で主幹研究員の武笠和則氏によれば「ガラスコアに比べて、1000倍以上のエネルギー密度で光を伝送できる」。
光ファイバーは、パワーを大きくすればするほど大容量のデータを遠くまで飛ばせる。だが、エネルギー密度が高すぎるとガラスコアは燃えてしまう。燃えることがない空気に光を通せば、この限界を越えられる。
加えて、「とんでもない波長多重ができる可能性もある」(山中氏)。チャネル数を10倍以上に増やした超多波長通信だ。
NTTのIOWN構想でも、1ユーザーごとに1つの波長を使い分けるような将来像が描かれているが、既存のファイバーでは、仮に1000個の波長を使おうとすれば、波長ごとのパワーを落とすしかない。容量は小さく、伝送距離も短くなる。
だが、1000倍ものパワーを通せるようになれば話は変わる。1人当たり十分な容量と伝送距離を持つ「Massive波長多重」も夢ではない。
さらに、「電力を分配して多数のIoT機器を動かせる」(武笠氏)可能性もある。電源確保が難しい環境でもセンサーや通信機器が使用できる。このように、空孔コアファイバーは、まったく新しい光ネットワークを実現できる可能性があるのだ。