店長同士の議論が活発に
同社がテレビ会議の導入を検討し始めたのは数年前。電話朝礼のツールをテレビ会議システムに切り替えようと考えたのが発端だった。
電話朝礼とは、地域ごとに10~15の店舗で構成されたブロックの店長とそのブロックを統括するマネージャーが参加するミーティングである。会議の基本的な目的は、本部からのメッセージを店長に伝達することにあるが、もちろん必要があれば、現場の情報を本部に上げるための場としても機能させたい。しかし、電話会議では相手の顔が見えないため、店長たちは自分が話を切り出すタイミングを掴みにくく、双方向のコミュニケーションが十分に行えないというもどかしさを抱えていたそうだ。
その解決策として俎上にのぼったのがテレビ会議システムだった。試行的な利用も含めてかなりの期間をかけて検討を重ねたうえ、2009年にエイネットの「Fresh Voice」を採用した。
同一ブロックとはいえ、各店舗は散在している。10~15人の店長が頻繁に直接顔を付き合わせて深い議論を重ねることは難しい。しかし、テレビ会議ならば、それが可能になる。テレビ会議の特徴は何といっても「お互いがそこにいるように話ができる」ことだが、その特徴を生かし、テレビ会議を議論の場として活用する動きが自然発生的に生まれているという。
「本社発のシャワー的な情報発信より、密度をもったエリアの仲間同士のコミュニケーションのほうが理解も浸透も早い。テレビ会議によって店長同士のコミュニケーションが圧倒的に促進された」と木岡氏は語る。
なお、当初は電話会議の代替として導入が検討されたテレビ会議だが、連絡事項の伝達がメインの朝礼には電話会議、キャンペーンの考案などのディスカッションにはテレビ会議というように、コミュニケーションの目的と内容によって両者を使い分けているそうだ。
テレビ会議成功の仕掛け
ただし、単にテレビ会議を入れただけで、店長を核とした創意工夫が生み出されるわけではない。漫然とテレビ会議に参加するのでは議論は拡散してしまう。そのためガリバーでは1つの仕掛けを導入している。
その仕掛けとは、ある店長は仕入れ強化、別の店長は販売強化と顧客満足度の向上といったように、各店長に担当テーマを割り振ることだ。チームリーダーを担うのは「委員長」に任命された店長である。このブロックごとに構成されたチームにより、アイデアの立案・計画から実行、評価、改善までのPDCAサイクルをテレビ会議を通じて進めているのである。「三人寄れば文殊の知恵」をテレビ会議システム上で実践しているわけだ。
ガリバーがテレビ会議システムの活用を本格的に開始して2年ほどが経過した。ブロックによって活用度に濃淡があるなど、取り組むべき課題はまだあるものの、従来の本部から現場へという垂直的な社内コミュニケーションにプラスして、店長同士による水平的なコミュニケーションが生まれたという。それは、「大きなトレンドの変化を本社が伝え、それを軸に個店で判断する」(経営企画室の椛田泰行氏)という第二フェーズにふさわしい企業文化の誕生を意味している。
ビジネスモデルだけでなく、それを支える企業文化にもこだわるガリバー――。新しい企業文化も同時に醸成していくことにより、現在約4万台の年間小売台数を3年後には10万台に増やす計画だ。