Wi-Fi管理はクラウドで自動化・可視化 AIが問題をパターン化し“先読み”

コロナ禍を経てWeb会議は企業活動にとって不可欠のものとなり、ハイブリッドワークも広がっている。その中で、Wi-Fi管理ツールに求められる要件は増えている。最新ソリューションはどう対応しているのか。

「Web会議が増えているが、ほとんどがハイブリッドの会議だ」。こう述べるのは、シスコシステムズ アジア地域エンタープライズネットワーク事業部 シニアプロダクトマネージャーの前原朋実氏だ。ハイブリッド会議の増加は日本に限らず世界的な現象だという。

この変化は、以前よりあったネットワークの統合管理へのニーズをいっそう強くしている。Web会議の増加に伴い、会議の音声や映像が途切れるトラブルへの対処がネットワーク管理にとって大きな課題となって浮上してきた。トラブルの原因はWi-Fiにあるとは限らない。ファイアウォールやWAN内など、ネットワーク全体で何が起こっているかを把握しなければ、真の問題解決には結び付かない。

大学も同様の課題を抱えている。Web会議に加え、オンライン授業が日常のものとなった大学では、キャンパスのネットワーク管理を行う担当者への負荷が急増した。特に大学のIT部門は慢性的に人手が不足しており、過大な負担は授業だけでなく研究活動にも支障を来しかねない。

“見える”へのこだわり

こうした中、クラウド型のWi-Fi管理ツール(図表1)が採用実績を増やしている。ジュニパーネットワークス Mist事業部 コンサルティングセールスエンジニアの林宏修氏は、ある大学の事例として、オンプレ型のコントローラーを同社の提供するクラウド型サービス「Mist」に移行することにより、ネットワークの状態の可視化が実現し、メンテナンスやソフトウェアのアップグレードにかかる手間や問い合わせ対応などの問題を解決できたという。「何か問題があった際はMistのダッシュボードを確認するだけで、簡単にトラブルシューティングができるようになった」(林氏)

図表1 クラウド型Wi-Fi管理ツールの例

図表1 クラウド型Wi-Fi管理ツールの例

ダッシュボードをWebブラウザで表示し、ネットワークの状態を視覚的に把握できる可視化機能が簡単に手に入るのが、クラウド型管理ツールの最大の特徴と言える。日本国内ではソネットが提供する、米国Ubiquitiのソリューション「UniFi」を例に取ると、ダッシュボード上でアクセスポイントやスイッチ等の接続状況および台数、クライアント接続数、スループットの推移などをGUIで閲覧できる。また、ネットワークのトポロジーを自動で図示するほか、フロアマップをアップロードすると機器の設置位置や電波強度をヒートマップ表示でき、ネットワークの状態をより直感的に把握できる。

またUniFiは、ユニークな可視化機能を持つ。UniFiのスイッチは筐体前面に液晶ディスプレイを搭載。ポートの状況をリアルタイムで確認できるうえ、タッチパネルになっているため操作性も両立させている。さらに、スマホアプリでスイッチにカメラを向けると、ARにより各ポートに接続されたデバイスを画像で確認することができる。

UniFiのスイッチはタッチパネルになる液晶ディスプレイを搭載

UniFiのスイッチはタッチパネルになる液晶ディスプレイを搭載

シスコが提供する統合型コントローラー「Cisco DNA Center」でも、ネットワークの状態が「“見える”ことにこだわっている」(前原氏)という。そのために重要なのは、デバイスからどれだけ管理ツールに情報を渡せるか。シスコのアクセスポイントでは、専用の電波でWi-Fiの通信品質をモニターしている。一般的なアクセスポイントでは、Wi-Fiの電波にオフチャンネルスキャンが割り込むため、10秒ごとに70ミリ秒の通信断が発生する。専用電波ではこれをオフロードし、Wi-Fiの各波は電波を途切れさせることなく、すべてのチャンネルを効率よく監視することができる。これにより、アクセスポイントから管理ツールへの“報連相”の品質が向上するというわけだ。

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