【ガートナー田崎氏に聞く!(前編)】スマートフォンはワーカーの「役割」を変革する

ユーザー企業は、スマートフォン/タブレット、クラウド、ビデオなどICTの新潮流に、どう戦略的に取り組んでいけばいいのか。ガートナー ジャパン バイス プレジデントの田崎堅志氏に全2回にわたり聞く。前編のテーマはスマートフォン/タブレットだ。

「顧客接点の強化」がスマートフォン/タブレット活用のカギ

――iPhone、Androidなどが目覚しい勢いで普及しているわけですが、ここまでの話を聞くかぎり、活用シーンとしては数年前に言われていたものとあまり変わらない気もするのですが。

田崎 ええ、その通りです。実は、ガートナーのモバイルユーザー、モバイルデバイスに対する考え方は、以前から大きく変わってはいません。フィットするデバイスをフィットする人に提供するというのが今も昔も基本になります。

ただ、最近のモバイルデバイスの変化による1つのポイントとして、ワーカーの能力がより広がってくるという側面があるとは見ています。

――どういうことですか。

田崎 1つの比喩として聞いてほしいのですが、例えば宅配便サービスのドライバーはかつて集配業務だけをやっていました。ところが現在では、顧客からの電話に直接対応したり、サービスセンターの延長の役割もドライバーは担っています。こうした役割の変化がさまざまな業種で起きてくる可能性があるのではないかと思っています。

例えば、保守サポート員が単に客先で修理して帰ってくるというのではなく、顧客の要望をヒアリングしたり、営業を行ったり、顧客満足度を高めるうえで、いっそう重要な役割を果たしていくようになるといったことです。

――スマートフォン/タブレットの活用によってホワイトカラーのワークスタイルを変革できるのでは、という期待もユーザー企業にはあるようですが、この点についてはどう考えたらいいですか。

田崎 スマートフォン/タブレットでワークスタイルが変革できるのであれば、モバイルPCを以前から使っていた人のワークスタイルはもっと変わっていていいはずです。先ほどワーカーの役割が広がる可能性があると話しましたが、スマートフォン/タブレットで変わるのはワーク「スタイル」ではない。ワーク「ロール(役割)」を変えるという観点から発想していくことが重要だと思います。

――なるほど。スマートフォン/タブレットで変革すべきは「スタイル」ではなく「ロール」だというのは非常に面白いですね。そうした視点からスマートフォン/タブレットの活用方法を考えるうえで、何かアドバイスできることはありますか。

田崎 どんな商売にも顧客が存在しており、顧客の満足度をいかに高めるかがビジネスでは最も大切と言えます。ですから、顧客と接する可能性がある人、顧客とのコンタクトポイントをいかに強化していくか、というできるだけカスタマーフロントな観点で考えていくことがポイントになると思います。

田崎堅志(たざき・けんし)氏

ガートナー ジャパン リサーチ部門 テクノロジ&サービス・プロバイダー バイス プレジデント

1991年よりデータクエスト ジャパン (現ガートナー ジャパン) にてデータ・ネットワーキングやボイス・コミュニケーション、パブリック・ネットワーク、モバイル・コミュニケーション、通信事業者のデータセンター・ビジネスなど、テレコミュニケーション産業全般にわたる動向分析ならびにマーケティング・コンサルティングに従事。
ガートナー ジャパン入社以前は、富士通にて通信処理マルチマイクロプロセッサ、ネットワーク・アーキテクチャ、高速パケット通信システムの研究開発、ネットワーク・システムおよびネットワーク・ソフトウェア製品の企画開発、プロジェクト・マネジメントを担当。高速光LAN、TDM、ネットワーク・サービス・プロセッサなど企業向け通信システム製品のハードウェアおよびソフトウェアを商品化。
IEEE Communications SocietyおよびComputer Society会員。電子工学修士。上智大学卒。

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