ローミング以外の通信手段も検討
事業者間ローミングの音声通話はVoLTEを想定しており、その接続方式として主にLBO方式とS8HR方式の2種類がある。
緊急呼はLBO方式、一般呼はS8HR方式がそれぞれ標準仕様となっており、呼び返しは一般呼での着信となるためLBO方式では対応できない。両方式に対応すると呼び返しは可能だが、一般呼も含めたローミングとなり、緊急呼を分離できないことから、ローミングを受ける救済事業者側のネットワークに負荷がかかる。被災事業者のユーザーの呼と分離できないので、通信規制をすると、救済事業者のユーザーもつながりづらくなるという課題がある。このため第1回会合では、携帯電話事業者やTCA(一般社団法人電気通信事業者協会)から、「まずは緊急通報への発信のみの実現を優先すべき」といったコメントが相次いだ。
そこで第3回会合では、構成員から「何らかの形で位置情報を共有できれば、呼び返し機能をある程度カバーできるのではないか」という質問が出された。これに対し、「110番通報を受けても無言で切れてしまう場合、何度か呼び返してようやく状況を把握することができる」(警察庁)、「雑踏の中や通報者が移動してしまうケースでは、通報してきた場所にたどり着けても、通報者にたどり着けない可能性がある」(消防庁)、「一報を受けた後の状況把握には呼び返し機能が必要」(海上保安庁)と、いずれも否定的な見解だった。
また、早急な対応策として、複数の構成員が「聴覚障がい者に提供されている緊急通報アプリを一般ユーザーに開放してはどうか」と提案した。
緊急通報アプリとは、スマートフォンからチャットで110番や119番通報できるものだが、「障がい者の便宜という観点から考えると、全国民に開放することは難しい」(警察庁)、「チャットから多くの通報が来ると、対応が難しくなるのではないか」(消防庁)という回答だった。
会合では事務局から、事業者間ローミング以外の非常時の通信手段についても示された。
事業者間ローミング以外の非常時の通信手段
呼び返し機能をめぐって、携帯電話事業者と緊急通報受理機関との意見の相違があらためて浮き彫りになったことから、今後は音声通話以外の緊急通報手段ついても並行して検討していくことが必要になりそうだ。