教材の開発スピードが劇的向上
横のコミュニケーションもLotus Connectionsをべースに広がっている。Lotus Connectionsはソーシャルソフトウェア技術を用いたコラボレーションツール。ブログ、Twitterのようなマイクロブログ、プロフィール、コミュニティ、Wikiなどのソーシャル機能を搭載し、社員同士のつながりを促進させる。
横のコミュニケーションの基盤となっているのはプロフィール機能だ。プロフィールの元データは、全社員を登録したHR Core DB。プロフィールには自己紹介や専門分野を社員が自ら書き込む。また、プロフィールには社員のレポートチェーン(レポートを上げる相手)やマイクロブログによる社員同士のつながり(同社では「ネットワーク」と呼んでいる)を表示することができる。社員プロフィールの画面自体が、社員同士の関係を表現しているわけだ。さらにベルリッツでは、このプロフィールに顔写真を掲載することを推奨している。「顔写真がプロフィールに載るとコミュニケーションが活発になる」(久保田バイス・プレジデント)からだ。
同社ではSPACEの導入以来、社員同士のコラボレーションの活性化によって仕事のスピードと質が向上しているというが、そのコラボレーションのためのツールとして社員が活用しているのがコミュニティ機能である。コミュニティとは特定のテーマごとに設置される電子会議室のことだ。コミュニティの開設は社員がグローバルITチームに申請し、その審査を経て利用部門が運用している。
その1つ、教材を開発するチームはコミュニティを活用し、教材開発のスピードを向上させている。以前は開発部門のリーダーが米国や南米、ヨーロッパなど各国のランゲージセンターの責任者にメールを送り、レスポンスを吸い上げるというプロセスで翌年の教材を開発していた。しかし現在では、コミュニティ画面を通じて、各国の開発担当者が教材の開発要件に関して提案や意見を述べ合い、また提案・意見に対するフィードバックをダイナミックに共有している。これにより、教材の開発要件を決めるのに従来は2~3カ月かかっていたが、今では1カ月以内に開発要件が固まるようになったという。国を越えて教材の開発にかかわる関係者すべてがタイムリーに議論できるから仕事のスピードが上がるわけだ。
コミュニティは仕事の質も向上させている。コミュニティが全世界の社員の知恵を集めるからだ。「以前は声の大きい国の意見が通っていたが、コミュニティに移行してからは声の小さな国の意見を組織的に取り込めるようになっている」と久保田バイス・プレジデントは話す。
SPACEは国境を越えた議論を支援する |
インスタントメッセージ(IM)もコラボレーションの推進に貢献している。国をまたがって何人ものメンバーが仕事をしていると、時差のある他の国のメンバーが出社しているのかどうかがわかりにくい。そこで、活用しているのがIMとプレゼンスの機能を備えたIBMのLotus Sametimeだ。教材開発部門は、社員は席に着いたらすぐにIMを立ち上げることをルールとしている。立ち上がっていれば、その人は仕事を始めているとわかる。プレゼンス機能を、チームメンバーの状態を見える化する道具として使っているのだ。