3.1.3 メインターゲットは情報感度が高い社員
リスペクターズは、ある仮説を打ち立てました。多くの社員は「そもそも社内のセクショナリズムを問題だと意識していない」(図3-4の左下の層)のではないかということです。そこで、各社員に「意識の壁」の存在と弊害に目を向けてもらえるような施策が必要だと考えました。
左下の層を動かすために左上の層、つまり「セクショナリズムは問題だと思っているが、実際にはどうやって組織や役割を越えて行動すれば良いのか分からない、できない」と感じている社員を最初のターゲット層とすることとしました。
各職場に少なからず存在している、こうした情報感度や変革意識の高い社員が少しずつ日々の行動を変えていき、職場でのロールモデルとなることで、それまで「意識の壁」に気づいていなかった社員も、次第に左上の層に移っていくのではないかと想定したのです。
こうした仮説の下、リスペクターズはどうしたら社員が「意識の壁」と「情報の壁」を越えやすくなるのか、という視点でブレーンストーミングを繰り返しました。そして、セクショナリズムという課題の本質は、突き詰めると「自分自身に目を向け、他の社員に目を向ける機会が少ないこと」に集約されるという結論に達しました。
社内に存在する、数多くの社員一人ひとりが持っているユニークな点をよく理解し、認める。認め合うAさんとBさん同士が相互に協力することを通じて、特定の「セクション」に縛られた限定的な視点ではなく、「NTTデータのAさん、Bさん」がより広い視点で発想し、行動していくのではないか、ということです。そこで、以下の3点を実現するきっかけ作りのための仕掛けを提供しようと考えました(図3-5参照)。
図3-5 Nextiの3つの目的 |
「発信」の場
一社員が、所属や職種を越えて、日ごろ考えている思いやちょっとした気づきを発信する場。
「気づき」の場
発信された思いや情報などに気づき、さらには社内のユニークな同僚の存在に改めて気づく場。また「他の人から見れば、自分自身にもこんなすごいところがあったのだ」という、各社員が自分の会社や仕事、自分自身の存在価値を再認識する場でもあります。
「つながり」の場
社内の同僚や自分自身の存在と価値に気づいたら、そこから一歩踏み出して、組織や役割を越えてコミュニケーションを始めるためのきっかけ作りの場。以前同じプロジェクトに所属していたメンバーや同期など、従来はつながりがあったものの、途切れてしまったネットワークを再構築するだけでなく、仕事上では出会うことのなかった新たな同僚とのつながりが創出できます。