ユニファイドコミュニケーションで医師不足を解消――東京都・奥多摩町の事例

ユニファイドコミュニケーション(UC)を活用した遠隔予防医療相談で、対面式診療よりも高い効果が確認できた――。東京都・奥多摩町の事例を紹介する。

過疎地における医師不足の解消と、自治体の医療費負担の抑制を目的にユニファイドコミュニケーション(UC)を活用する取り組みが進められている。

ところは、東京都西多摩郡奥多摩町。2008年11月から2009年3月にかけて、同町住民と都心の医師との間で遠隔相談の実証実験が行われた。慶応大学 とNEC、KDDIが共同で、音声通話と動画像の共有、端末管理や相談業務のスケジュール機能などが連携した「遠隔予防医療相談システム」を開発。端末を 地域集会所等に常設し、住民75人が定期的に日本橋の栗原クリニックとの間で遠隔相談を行った。

実験前後にバイタルデータを取得し効果を分析した結果、慶応大学と、実際に相談に当たった医師が対面式診療を上回る効果を実証。2010年3月からは正式に事業化されており、同町の期待の大きさが窺える。

運用効率化にユニファイドコミュニケーションが本領発揮

このシステムはNECのユニファイ ドコミュニケーションミドルウェア「UNIVERGE Sphericall」をベースとしたものだ。NECの田中英俊氏によれば、「単に通話できるだけでなく、住民と医師 の信頼関係を高め、効果的な相談を行うにはユニファイドコミュニケーションが有効だという仮説の下に」システムを開発。テレビ電話とデータ共有の連携にとどまらず、相談サービスの運用を効率化するさまざまな機能を搭載した。

このサービスは、住民側の端末(奥多摩町)、医師のPC(日本橋)、そして運用業務を行うサポートセンター(神奈川県鶴見区)の三者が連携して行う。システムには複数の端末を管理するスケジューラー機能が備わっており、予約時間になるとサポートスタッフは医師を電話で呼び出す。その後、三者テレビ電話に移 行し、サポートスタッフは医師と住民のやりとりをモニタリングする。医師はスケジュール管理や端末管理の煩わしさから開放され、相談業務のみに集中でき る。

公民館には体重計や血圧計などの測定器も置かれており、住民はIDカードをかざして測定するだけでデータが自動的にデータベースに蓄積され、相談時に活用 される。血液の流動性を表す「血液レオロジー動画」その他のデータ画像を表示し、さらにお互いの表情を見ながら相談できるため、住民の健康に対する理解も深まっているという。

さらに、相談記録や会話内容の録音、音声認識による相談記録入力補助などの機能も備える。運用効率に対する評価も高く、医師不足解消の方策の1つとして相談業務を行った栗原医師も大きな期待を寄せているという。

住民側は端末の操作が一切不要(左)。画面には、お互いの表情のほか、データや動画なども共有できる

月刊テレコミュニケーション2010年5月号から一部再編集のうえ転載(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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