ICT×未来

次世代ワイヤレス技術の実用化ロードマップとインパクト[第2回]

【ボディエリアネットワーク】健康状態を遠隔から常時見守り 体内に埋め込むインプラント型も

文◎太田智晴(編集部) 2010.05.12

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NICTの浜口清グループリーダー。首から下げている
のがNICTが開発したペンダント型アクセサリとして
装着可能なウェアラブルBAN

ボディエリアネットワーク(BAN)の研究が進んでいる。BANとは、人体の表面や体内用の無線ネットワークのこと。医療用途などで期待が高まっている。

日本が現在直面している重大な課題とは何か。医療費の高騰や介護など多くの深刻な問題を孕む高齢化社会の進展はその筆頭に挙げられるが、ICTを使ってこの問題の解決に貢献しようという取り組みが進んでいる。ボディエリアネットワーク(BAN)の研究がそれだ。

BANとは「人体上および体内に配置する端末によって構築される無線ネットワーク」のこと。体に取り付けたセンサー等が得た生体情報などを無線で収集し、医療やヘルスケアなどに役立てようというものだ。

情報通信研究機構(NICT)医療ICTグループグループリーダーの浜口清氏によれば、BAN研究が世界的に本格化しだしたのは、IEEE802.15.6での標準化作業が始まった2006年頃から。標準化グループの立ち上げで中心的役割を果たしたNICTのBAN研究がスタートしたのも3年前で、世界の最先端を走っている。

なおIEEEでの標準化作業は現在、複数提案の一本化に入ったところ。2010年中にドラフトを完成させ、その後、審査委員会での審査・承認を経て正式な標準規格になるスケジュールとなっているという。802.15.6の副議長および書記はNICTが務めている

生活習慣病予防の切り札

BANは体の表面に無線チップ付きの心電計や血圧計などを装着する「ウェアラブルBAN」と、無線チップ付きのセンサーやカプセル内視鏡などを体内に入れる「インプラントBAN」の2種類に分類されるが、NICTでは2009年5月、ペンダント型アクセサリとして装着可能なウェアラブルBANの開発に初めて成功した。このペンダントは一体どういったことを可能にするのか。

 

ペンダント型BAN BANのモニター画面

NICTが開発したペンダント型アクセサリとして装着可能なウェアラブルBAN

ペンダントから送られてきた情報をPCでモニターしているところ


ペンダントの中には、心電図や体表温度、体位の変化を測るためのセンサーが内蔵されており、首からぶら下げた状態で常時計測できる。そして、これら複数のセンサーが集めたデータは「BANコーディネータ」と呼ばれる機器に集約され、遠隔の医療機関などに送信される。つまり、心臓や体温に異変はないか、突然倒れたりしていないかが、遠隔からモニタリングできるのである。

ちなみに、ここでBANコーディネータの役割を果たしているのは携帯電話だ。このほかBANから遠隔へデータを送信する手段としては、WiMAXや衛星通信なども想定されているという。

このウェアラブルBANの画期的なところは20g程度のペンダントを首からぶら下げるだけという点である。簡単に装着・計測できるかどうかは、BANが普及するうえで大変重要だ。

また、複数のセンサー情報を同時に扱える点にも注目したい。例えば心電図に変化が起きたとき、体温や体位はどうだったかなど、時間の同期がとれた形で複数のセンサー情報が分かることで、その人の状況がより正確に把握できるのである。

 

インプラントBAN
インプラントBANの実用化も進んでいる。写真はオリンパスメディカルシステムズの小腸用カプセル内視鏡で2008年10月に国内発売された。カプセルの大きさは外径11mm、長さ26mm。撮影画像は、カプセル本体から無線で患者が身に着けたアンテナに送信され、順次受信装置に蓄えられる(実際のカプセルにはロゴは入っていない)

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