さまざまな領域で実用化が進むIoT冒頭、成田氏は、「モノのインターネットはさまざまな用途で実用化されている」と述べ、同社のIoT開発プラットフォームを用いて実現された事例を9つ紹介した。
1つ目は、ガン治療器の稼働状況を遠隔で監視する仕組みをIoT/M2Mの仕組みによって実現した北米の医療メーカー、ELEKTAの事例。同社は、IoT/M2Mの仕組みを利用してファームウェアの入れ替えやソフトウェアの書き換えも行っている。
2つ目は、血液検査装置メーカーのsysmex社の事例。同社は、遠隔で検査装置の利用回数をカウントしている。また、検査情報に基づいて、検査精度を高めるトレーニングの受講やスタッフの増員を提案するなど、顧客に便益を提供する仕掛けとしてもIoTを活用している。
3つ目は水力発電機に250~300のセンサーを取り付け、振動や温度を監視しているGEの事例。同社は特にベアリングの温度に注目しており、メンテナンスを効率よく行うためにIoTを活用している。
4つ目は、特殊金属メーカーのATIの事例。3つ目までは自社の製品にIoT/M2Mを適用した例だが、ATIは工場の設備にセンサーを取り付け、最も稼働状況がいい運用手法を横展開し、世界中の工場の稼働を最適化しようと取り組んでいる。その結果、8%の業務改善を達成したという。
PTCジャパン 製品事業部 執行役員 成田裕次氏 |
5つ目はエアバスの事例。同社は、飛行機を組み立てる作業担当者が正しいワークオーダーに従って組立加工を行っているか、また正しい器具を用いて作業を行っているかを監視し、作業担当者の動線に従って作業指示を出す仕組み作りにIoTを活用している。
6つ目は、自転車のシェアリングサービス全体にIoTを活用しているSmoove社の事例。いまだれが自転車を借りているか、どこに返すかといった情報を地方自治体に提供している。
7つ目はJOYGLOBALの事例。掘削機械が行う掘削作業を自動化するための仕組みをIoT基盤を活用して実現している。掘削現場ではトラックやローダー、掘削機械がすべて無人で動いている。それらが協調して動く仕組みをIoT基盤を用いて実現している。
8つ目はSmartpatch社の事例。同社は構造物の監視を行うデバイスを提供している。自治体は、振動や傾きを監視するデバイスを橋梁に取り付け、保全計画の立案や修理の実施に役立てている。
9つ目は農業の自動化に取り組んでいるONFARM社の事例。生産を土に埋め込んで土の中の水分量を定期的に測っている。将来の水分量を予測し、その予測に基づいて自動的に散水する仕組みを構築している。
成田氏は、こうした事例を踏まえて、IoT技術の活用領域が急速に拡大していると話す。IoT技術の活用領域の第1は、「Smart,Connected Products」であり、製造業が自社製品の遠隔診断サービス、稼働状況の分析に活用すること。第2は、「Smart,Connected Operations」であり、モノづくりの見える化やオペレーションの最適化をすること。ATIやエアバスの事例がそれに当たる。3つ目は、「Smart,Connected Apps」で、IoT/M2Mの対象となるのはモノではなくシステム。成田氏は、「システムの稼働を監視したり、システム間が協調する仕組みにIoT/M2Mが使えると考えている」という認識を示した。