今こそ知りたいRFID(後編)――検討時の注意点とInternet of Things時代の可能性

M2MやInternet of Things(モノのインターネット)などの文脈からも最近改めて注目が高まりつつあるRFID。過去2度のRFIDブームを経て、現在ではその活用シーンも大きく広がっている。後編では、RFID導入検討時のポイントやIoT時代における可能性などを見ていく。

「RFIDは万能ではない」

前編ではRFIDの4つの利点を紹介したが、その一方で日本自動認識システム協会(JAISA) 研究開発センター RFID担当 主任研究員の立石俊三氏が強調するのは「RFIDは万能ではない」という点だ。

RFIDを利用すれば、非接触でタグ内のデータを読み書きできるし、そのタグはダンボール箱の中に入っていて見えなくても構わない。複数タグの一括読み取りもサッと行える。バーコートではできなかったことを実現可能だ。

しかし、バーコードと比べて、すべての面で優れているわけではない。衝撃が加われば壊れるし、何よりRFIDタグの単価はバーコードより格段に高い。このため、将来すべてのバーコードがRFIDに置き換わるということは考えられず、「今後もRFIDとバーコードは共存していく」と立石氏は説明する。

さらに同氏は、「RFIDの導入を目的にしてはいけない。RFIDはあくまで課題を解決するツール」とも指摘する。自社の課題とRFIDの導入効果を明確に定量化したうえで、RFIDの導入を進めていくことが大切ということだ。

 図表 RFIDの検討時、してはならない勘違い
RFIDの検討時、してはならない勘違い
 出典:JAISA資料から編集部作成

図書館に見るRFIDの導入効果の実際

では、RFIDで解決できる課題とは何だろうか。その1つのケーススタディとして参考になるのが、図書館での活用例である。

図書館におけるRFID活用の歴史は比較的古いが、以前は図書館の建替や新設などにあわせてRFIDが導入されるケースが大半だった。建築費と比べればRFIDの導入コストは大した額ではなく、先進性もアピールできる。

しかし最近は、既存の図書館にRFIDが導入されるケースも増えてきているという。過去の事例によって、RFIDの導入効果が数値で実証されてきたことが理由だ。

図書館での代表的なRFIDの活用例だが、まず蔵書の貸出や返却のセルフサービス化が実現できる。蔵書にRFIDタグを貼付し、RFID対応の自動貸出・返却機で利用者自身が貸出・返却手続きを行うようにすることで、貸出・返却窓口に必要だった人手を減らすことが可能だ。

また、ゲートをRFID対応にすることで、貸出処理がされていない図書を検知し、盗難を防止することもできる。

さらに、蔵書の点検作業の省力化にも大きく貢献する。従来は棚から取り出してバーコードで1冊ずつ処理する必要があったが、RFIDであれば棚に並んだ蔵書にハンディタイプのリーダライタをかざすことで一気に点検作業が行えるためだ。

ここで、図書館を例に見てきたRFIDの導入効果について、おおまかに一般化して整理してみることにしよう。

まず挙げられるのは業務の効率化だ。これまで従業員の人手に頼っていた作業などを、RFIDによって自動化・省力化・セルフサービス化できる。あまりに手間やコストがかかるため従来はできなかったことが、RFIDの活用によって実現可能になるケースもあるだろう。

もう1つはサービスの向上である。図書館のケースでは、自動貸出・返却の導入によりスピーディに貸出・返却が行えるようになったし、利用者のプライバシーも守られる。また、蔵書の点検作業にかかる時間が大幅に減るため、図書館の休館日を減らすことができる。

このほか、工場や医療など、人為的ミスが甚大な損失をもたらす現場などでもRFIDはよく活用されている。

これらの効果が、導入・運用コストを上回るかどうかが、RFID検討時のポイントとなる。

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(提供:NTTファシリティーズ総合研究所)

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