2023年の法人データ通信支出額は前年比5.1%成長、IDC Japan調査

IDC Japanは2024年5月29日、国内通信サービス市場予測発表した。

それによると、国内モバイル通信サービスのエンドユーザー支出額は6兆6800億円、前年比成長率はマイナス0.3%となった。IDCでは、2028年の支出額を6兆7750億円、2023年~2028年の年間平均成長率(CAGR:Compound Annual Growth Rate)を0.3%と予測する。

国内モバイル通信サービス市場 支出額予測、2023年~2028年

国内モバイル通信サービス市場 支出額予測、2023年~2028年

モバイル通信サービス市場は、新たな局面に入ろうとしている。2023年の個人セグメントにおける、データ通信用途への支出額の前年比成長率はマイナス0.9%となり、前年の同マイナス2.9%から改善した。市場は、MNOが提供する低価格な料金プランの浸透を背景とした、近年の支出額の減少トレンドをようやく脱しつつある。

また、法人セグメントでは、IoT端末や業務用デバイス向けのデータ通信需要が堅調に拡大している。

法人セグメントにおけるデータ通信用途への支出額の前年比成長率は5.1%となり、前年の同3.2%を超える成長となった。加えて、MNOはネットワークスライシングといった5G SAの特徴を活かし、従来のパブリックネットワークでは提供できなかった、新たなワイヤレスサービスの提供を開始している。こうしたサービスは、これまで固定通信ネットワークやWi-Fi、MVNOの独自サービスが応えてきた顧客の需要に、今後より柔軟かつ高い費用対効果で応える可能性があるとIDCでは見ている。

法人向けWANサービス市場に目を向けると、新型コロナウイルス感染症の5類移行に伴い、従業員のオフィス回帰が進展し、WANの増速需要がいっそう高まったことが市場の成長に寄与した。成熟した市場セグメントであるL2帯域確保、L3帯域確保においても、売上額の前年比成長率がそれぞれ0.6%、0.8%となり、市場が拡大。一方で、ゼロトラストやSASE(Secure Access Service Edge)といったフレームワークの浸透やパブリッククラウドの利用拡大を追い風として、企業がインターネット回線を活用する動きも拡大し、マネージドインターネットVPNでも売上額が増加している。

2028年までの国内通信サービス市場は、伝送するデータ容量の増大、企業におけるデータ利活用に向けた取り組みの拡大が通信サービスへの需要を生み、市場が継続的に成長すると予測している。IDC Japan Infrastructure & Devicesのシニアリサーチアナリストである水上貴博氏は、「IoT向け通信サービスでは、5Gネットワークの成熟がもたらす競争激化に備え、自社の強みとケイパビリティを整理し、市場におけるポジショニングを再設定すべきである。また、法人向けWANサービス市場では、安定した通信品質を求める企業の閉域網への需要が根強い一方で、ゼロトラスト化を進める企業などがインターネットの積極的な活用に動いている。通信事業者やSIerは、企業におけるネットワークとセキュリティの統合サービスへの需要を法人向け事業の成長材料とできるよう、サービスの拡充を急ぐべきである」と分析している。

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