第3回までで見てきたように「Microsoft Lync」では、インスタントメッセージング(IM)、プレゼンス、Web会議、電話といった各種のコミュニケーション手段をデスクトップクライアント「Lync 2010」から利用できる。ここまで、IM・プレゼンス(第2回)、Web会議(第3回)の機能について解説してきた。今回は、残る「電話」の機能について説明していこう(連載目次はこちら)。
Lyncは、外線の発着信、着信した通話の保留・転送をはじめ、企業で一般的に利用されているIP-PBXと同様のIP電話機能を備えている。第3回までは、社内コミュニケーションの円滑化を主眼にLyncの機能を説明してきたが、外線や拠点間の電話もLyncに統合すれば、業務上使用するコミュニケーションツールをすべて単一のインターフェース上で利用できるようになる。
マイクロソフトは、Lyncの前身である「Office Communications Server 2007(OCS)」および「OCS リリース2(R2)」でも特にこの電話機能を重点的に強化してきた。その成果により、着信の自動転送設定や、複数の端末を鳴動させる応答グループ、通話を保留し他の電話機から保留解除するパーク保留など、一般的に使われるIP-PBXの機能はひと通りカバーするに至っている。
プレゼンスを確認したうえで、連絡先リストの「通話」ボタンなどから、ワンクリックで電話がかけられる。デスク上の固定電話機だけでなく、携帯電話など他のデバイスを複数登録することもできる。 |
IMやWeb会議などと同様、電話の発信もデスクトップクライアント「Lync 2010」の連絡先リストや連絡先カードなどからワンクリックで行える。タブを切り替えれば、ダイヤルパッドから直接電話番号を入力することも可能だ。また、Exchange Serverのボイスメールにも直接アクセスし、メッセージを再生することができる(下写真)。
「電話」タブに切り替えると、連絡先の検索や、電話番号の直接入力ができる。Exchange Serverのボイスメールの再生もここから直接行える。折り返し電話する場合も、通話ボタンからすぐに発信できる |
通常、企業や団体にはPBXシステムがすでに導入されている。デスクトップクライアント「Lync 2010」で電話も活用できるユニファイドコミュニケーション基盤を構築しようとする場合は、大きく分けて2つのシナリオがある。(1)既存の電話設備とLyncを連携させる、あるいは(2)既存の電話設備からLyncのIP-PBX機能に乗り換える方法だ。もちろん、(1)から始め、電話設備の耐用年数が経過した段階で――拠点が複数ある場合は、老朽化した拠点から徐々に――(2)へと移行するといったシナリオが最も現実的だろう。
(1)の場合は、サードパーティから提供される認定ゲートウェイを経由して、Lyncと既存のPBXを連携させることができる。国内で販売されているものとしては、米NET社製のゲートウェイ「UX2000」(住友商事マシネックスが販売)などがある。ゲートウェイ装置を介して既存のPBXを連携させれば、使い慣れた電話機でプレゼンス連動やクリック・トゥ・コールなどを利用することもできる。
(2)のケースでは、音声インフラも完全にLyncに統合されることになる。以下、Lyncが備えるPBX機能と、統合した場合のメリットを整理していこう。なお、PBX機能は、3種類用意されているクライアントアクセスライセンス(第1回参照)のうち「Plus CAL」で提供されている。