Microsoft Lyncで変わるリアルタイムコミュニケーション [第4回]PBX統合で電話設備・運用コストを大幅削減

第4回は、「Microsoft Lync」が備える電話機能と、既存のPBXシステムから「Microsoft Lync」のユニファイドコミュニケーション基盤への移行プロセスについて説明していく。音声インフラをLyncのソフトウェアPBX機能に統合すれば、運用コストの大幅な削減も可能だ。

音声インフラ統合で運用コストを削減

従来、OCS/OCS R2のユーザー企業は、ハードウェアPBXをベースとした音声インフラと連携させる形での運用形態を取るケースがほとんどだった。だが、Lyncでは可用性の向上などPBX機能がさらに強化されたことで、音声インフラそのものをハードウェアPBXからLyncへと移行するシナリオがより現実的になったと言えるだろう。

では、音声インフラをLyncに完全に統合することの利点とは何だろうか。もっとも大きなメリットは、ICTインフラコストを削減できることだ。IT系のインフラと別個にPBXシステムを運用管理するコストの二重化を廃し、すべてを「Lyncの運用管理」に集約することができる。

Lyncでは、Active DirectoryでIDを管理し、電話番号を含めたユーザー情報や電話端末を効率的に統合管理できる。そのため、IM・プレゼンス、Web会議、電話、さらにExchange Serverのメールなど、すべてのコミュニケーションインフラを一元的に管理できるようになる。また、データセンター内でソフトウェアPBXを展開、管理することも可能だ。ハードウェアPBXをベースとした従来の電話システムに比べて、運用コストを大きく削減できる可能性があるのだ。

移行シナリオの例を挙げると次のようになる。Lyncの導入当初は前述のゲートウェイ「UX2000」を活用して既存のPBXシステムをLyncと連携させる。PBXが老朽化した拠点から徐々に既存設備を廃し、UX2000と端末のみの環境に移行。UX2000にはリモート管理機能も備わっているため、WANを経由してセンター拠点のLync Serverの機能を利用する形態とすることで、音声インフラの運用管理をセンター拠点へ一元化できる。

Lync対応ゲートウェイ「UX2000」の管理画面。Webブラウザ上でLync Serverや回線などの状況をモニタリングできる。システムの監視や各種の設定・変更なども可能だ

実際、これまでOCS/OCS R2を導入・運用してきたユーザー企業も、この点に注目しているようだ。すでに6月から、世界中でLyncの先行導入プロジェクトが進められており、国内でも複数の企業がRC(製品候補)版でパイロット環境を構築しすでに活用を始めている。これらの企業は、OCSを活用している段階でIMやプレゼンスの効果はすでに認識済みであり、Lyncの電話機能に特に着目しているという。

SIerの日本ユニシスは3社の先行導入事例を手がけており、そこでは業務効率の向上やWeb会議の出張費削減とともに、ユーザー企業はVoIP統合による通話コスト、運用コストの削減を目的にLyncの検証を進めている。同社によれば、保留転送系の機能拡充、可用性の向上に加え、Lync用の固定IP電話機の選択肢が増えたことも、高い評価につながっているとのことだ。

Lync対応の通話用デバイスは、ポリコムやプラントロニクス、ジャブラなどから多様な形態のものが発売されている。PCにUSB接続して用いるヘッドセットや会議用スピーカーフォン、受話器型のハンドセットのほか、Bluetoothヘッドセットなども用意されている(下写真)。PC上のデスクトップクライアントで電話の操作――クリック・トゥ・コールなど――を行い、実際の通話はこれらのデバイスで行うことができる。

日本プラントロニクスが提供するLync対応デバイス。写真の卓上電話機(左)とBluetoothヘッドセットのほか、会議用スピーカーフォンなど多様なデバイスを発売する 「Jabra」ブランドのヘッドセットを販売するGNネットコムジャパンも、多様なLync対応デバイスを提供。写真はPCとUSB接続して通話するハンドセット型端末

またポリコムからは、クライアントソフトウェアを搭載し、スタンドアロンで動作するSIP電話機「Polycom CX600」や「同 CX500」も発売されている。電話機の液晶画面に連絡先やプレゼンスを表示したり、ボイスメールにアクセスしたり、あるいはPCクライアントとの間で通話ログを同期させるといったことも可能になる。

ポリコムが販売するLync対応デバイス。手前はLyncクライアントを搭載しスタンドアロンで動作するSIP電話機。Lyncと連携するIP音声会議システム「CX3000」(右)も用意されている

既存の電話環境からLyncに移行する場合でも、電話の使い勝手を大きく変えることは避けたいものだ。ヘッドセットで通話することに抵抗の強い日本企業が導入するうえで、多様な電話機型のデバイスが選択できることもOCSと違ったLyncの大きなポイントと言えるだろう。

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