超高速大容量、超高信頼低遅延、そして同時多数接続という3つの特徴を備えた5G通信のサービスエリアは、都市部を中心に広がってきた。そして同じ5Gの技術を、工場やプラントなど特定のエリアで提供する「ローカル5G」は、IoTやセンサー類などの活用を促進し、デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する重要な通信技術として注目を集めている。
「工場において例えば、市場の変化に合わせて柔軟に製造ラインも変更したいと思っても、有線接続ではケーブルの引き直しが必要で対応が困難でした。5G技術が出現し、ローカル5Gが実用化されることで、製造ラインの接続を無線化し、多品種少量生産に柔軟に対応できるラインを作ることができます」(トレンドマイクロ ビジネスマーケティング本部 古賀恒昭氏)
他にも、多数のカメラやセンサーをつないでラインの状況を把握してメンテナンスや手順の改良に活用したり、自動搬送車を組み合わせて物資の移動を自動化するといった具合に、さまざまな用途で期待されている。
トレンドマイクロ コネクティッドビジネス推進本部本部長代理 津金英行氏(左)、ネットワークセキュリティ推進部 グループ長 西川寛一氏(中央)、ビジネスマーケティング本部 古賀恒昭氏(右)
ローカル5Gでつながる世界の大前提はセキュリティの確保サイバーセキュリティ企業のトレンドマイクロも、「Connected World」(つながる世界)というキーワードの下、IoTも含めあらゆるものがつながる世界の到来を予見している。
ただ「つながる世界が成立するには、物理の世界とサイバーの世界を行き来するデータが正しいことが大前提であり、データの送信元・送信先および通信経路が信頼でき、安全性が担保されていることが重要になります」と、同社コネクティッドビジネス推進本部 本部長代理の津金英行氏は指摘する。
昨今、企業がランサムウェアをはじめとするサイバー攻撃の影響を受け、工場の操業停止に陥る事態がたびたび発生している。
また持ち込まれたUSBメモリやRaspberry Pi経由でシステムが侵害されるケースも少なくない。
トレンドマイクロが製造業を対象に行った調査によると、回答した日本企業の約66.7%がセキュリティインシデントを経験し、そのうち約77.0%が何らかの形で生産停止に陥ってしまった。昔のように「ネットワークから隔離されているから安心だ」とはまったく言えない状況だ。
確かに5G自体、暗号化や無線通信区間の秘匿性確保など、ネットワークそのもののセキュリティが向上している。だが、「脆弱なIoTデバイスから脅威が侵入したり、SIMが盗まれて不正に利用されるといったリスクもあります。デバイスの保護はもちろん、デバイスから出力されるデータの挙動をネットワーク上で監視し、脅威を局所化していく仕組みが必要です」(古賀氏)