ネットワークがつながらない、遅いといったトラブルの原因究明と復旧は、年々難しくなっている。背景にあるのはモバイルやクラウドの普及だ。
かつての企業ネットワークは、本社等のオンプレミス設備につなぐ拠点間通信網とインターネット接続回線だけのシンプルな構成だった。だが、モバイル端末とクラウドサービスで業務を行うのが当たり前の現在は、多様なネットワークを組み合わせて使うようになっている。そのため、トラブルの原因がISPにあるのかキャリア網にあるのか、それともクラウド側なのか、状況を即座に把握するのが難しい。
これに追い打ちをかけたのがコロナ禍だ。リモートワークが常態化し、社員は自宅のインターネット回線も使うようになった。通信経路がさらに多様化・複雑化した結果、企業のサポートデスクも通信事業者も問い合わせやクレームの対処に追われる機会が増えた。
だが、通信事業者が対処できる範囲は、自社ネットワークに限られる。トラブルの原因特定さえままならず、自分のところに問題がなくてもクレームばかりが溜まり、顧客満足度が下がっていく。
回線品質の見える化で“頼られる通信事業者”に放っておけば“顧客離れ”を招くこの問題の解決に乗り出す事業者も出てきた。通信事業者等のサービスプロバイダー(SP)向けシステムを長年手掛けてきた日商エレクトロニクス プラットフォーム本部の上野駿介氏は、「これを解消する手立てはないかという相談が最近増えてきている」と話す。
日商エレクトロニクス プラットフォーム本部 第一プラットフォーム部 ビジネス推進課 主任の上野駿介氏(右)と、第一プラットフォーム部 セールスプロモーション二課 主任の日向崇文氏
同社が提示する解決策は、「自社網だけでなく、顧客が使っているネットワーク全体の見える化」だ。エンドツーエンド(E2E)でネットワークの品質を可視化できれば、障害原因を迅速に特定し、「他事業者の問題だった場合には、自社の責任ではないことと対処法を明確なデータで示せる」(同氏)。“うちじゃない”と差し戻すだけの事業者と比べて、顧客からの信頼は確実に増す。
そんな“頼られる通信事業者”へ導くソリューションとして同社が提案するのが「Juniper Paragon Active Assurance(PAA)」だ。一般的なネットワーク監視とは異なる魅力が3つある。
1つは、“見たいところ”へ簡単に観測点を作れることだ。製品はソフトウェアで構成されているため、テストエージェントを仮想マシンやコンテナとして自由に配置することができる。その他にもARMチップに対応しており、IoTデバイスなどへのインストールも可能だ。
図表1は動作イメージを示したものだ。顧客の拠点やクラウドの出入口、キャリア網のエッジ等に仮想マシンとしてテストエージェントを配置し、その間の通信経路、遅延等をモニタリングできる。回線の正常性試験等のテストシナリオを作っておけば、トラブル発生時に原因箇所を即座に特定することが可能だ。下の画面イメージ1のように、ステップごとに「Path Trace」「TCP/UDP Check」「QoS policy profiling」とプロトコルを選び、連続的なテストシナリオを実行する。
図表1 Juniper Paragon Active Assuranceの動作イメージ
【画面イメージ1:テストシナリオの作成】ステップごとにプロトコルを選択して、同時に実行するテストを設定する(画面は回線の正常性テストを想定)(画像クリックで拡大)