マイクロソフトは間もなく、新たなユニファイドコミュニケーション・ソリューションを市場投入する。2010年12月に提供を開始する「Microsoft Lync」がそれだ。Office Communications Server 2007 R2(OCS)の後継となるこのLyncの特長の1つに電話機能の拡充がある。
中でも注目なのが、支店用のサバイバル装置「サバイバルブランチアプライアンス(SBA)」を用意することだ。自営型IPセントレックスを構築する場合に拠点側にSBAを設置することで、WAN回線に障害が発生したときに電話回線への迂回路を確保する。これにより、他ベンダーのIP-PBXと同様、低コストで信頼性の高い電話システムが構築できる(図表1)。
図表1 サバイバルブランチアプライアンス(SBA)の効果 |
このSBAを提供するのが、マイクロソフト認定ゲートウェイを開発・販売している米NET社だ。
同社は10月、国内ディストリビューターである住友商事マシネックスから、LyncとOCSに対応する新たなゲートウェイ製品「UX2000」を発売する。SBAとして動作することはもちろん、そのほかにもマイクロソフトのUC環境に付加価値をもたらす戦略商品となっている。
既存設備・NWとLyncを統合
NETは従来、レガシー/IP-PBXとOCSとのインテグレーションを可能にするマイクロソフト認定ゲートウェイ「VXシリーズ」を開発・販売してきた。既存の電話システムを活かしつつUC環境へ移行するための効率的なマイグレーションパスを提供することが、同社の事業の柱だ。
UX2000もそのコンセプトに基づくものだ。PSTNやISDN、VoIP網など多様な回線、アナログ電話機やFAX、レガシー/IP-PBX、無線IP電話機など多様な端末機器とのインターフェースをサポート。既存システム、既存ネットワークとOCS/Lyncとの統合を可能にする(図表2)。VXシリーズの特徴的な機能であった、Active Directoryと連携したインテリジェントコールルーティング機能も継承。米NETの副社長フランソワ・リー氏は「これまで積み重ねてきたVoIP、UC、OCSのノウハウをすべて注ぎ込んだ」と胸を張る。
さらにUX2000には、これらゲートウェイ機能に加え、ファイアウォール、セッションボーダーコントローラー、ルーティング等の機能を搭載した。支店に必要なネットワークとセキュリティの機能をワンボックスにまとめたオールインワン型の製品として仕上げられている。センター側からネットワーク経由で運用管理が行えるリモートマネジメント機能も装備し、運用負荷の軽減にも配慮している。
図表2 UX2000モジュラープラットフォーム |
UCアプリのプラットフォームに
このようにUX2000は、PBXシステムからマイクロソフトUC環境へ移行するために不可欠な機能を提供する。だが、本製品の価値はそれだけではない。NETはUX2000の開発に当たってもう1つ、新たな取り組みをしている。
それが、アプリケーションサーバーカードの内蔵だ。リー氏はその狙いについて次のように語る。
「Lyncと連動したり、UX2000が備える通信インターフェースを利用するアプリをサーバーカードに載せられる。UX2000は単なるゲートウェイではなく、NETやサードパーティが提供する“UCアプリ”を動作させるプラットフォームになる」
マイクロソフトが開発者向けに公開しているMicrosoft Unified Communications Managed API(UCMA)を使えば、OCS/Lyncと他の業務・通信システムを連動させるアプリが開発できる。UX2000は、より付加価値の高いUCソリューションを提供するための基盤になるのだ。