LPWAの先駆者としてマーケットを開拓してきたSigfoxは、フランスSigfox社が世界72カ国で展開するLPWA(Low Power Wide Area)ネットワークだ。1国につき1社とオペレーター契約を結ぶ形式で、日本では京セラコミュニケーションシステム(KCCS)が提供している。
日本国内では2017年2月から商用サービスを開始し、2020年12月時点で人口カバー率95%超、パートナー企業の数は609社にも上る。
「最初は、高齢者や子どもの見守りサービスでの利用から始まった」とKCCS 取締役 LPWAソリューション事業部長の松木憲一氏は振り返る。そこから河川の水位監視や鳥獣害対策、倉庫の温度管理、防災対策など幅広い分野で順調に裾野を広げてきた。
最近では、ハーモニィ社の「MORITO CO2ウォッチャー」に採用された。センサーを空間内に設置するだけでリアルタイムにCO2濃度を測定し、専用アプリで換気状態が一目で可視化できるソリューションだ。新型コロナウイルス感染症対策として提案しており、既に飲食店や介護福祉施設、展示会などで導入実績がある。
「MORITO CO2ウォッチャー」のセンサーとアプリ画面(左)、
「MORITO CO2ウォッチャー」を導入したまるは食堂での利用例
画像提供:KCCS
「CO2濃度が高いということは換気が悪いということ。可視化することで換気のタイミングが分かり、新型コロナはもちろんインフルエンザの予防にも繋がる。また、CO2濃度が高いと作業パフォーマンスが低下するという研究結果も出ているので、アフターコロナでは生産性向上の観点から教育現場やオフィスにも提案できると考えている」とICT事業本部 IoTソリューション事業部 IoT営業部 東日本IoT営業2課の池上真衣氏は説明する。
KCCS 取締役 LPWAソリューション事業部長 松木憲一氏(左)、
ICT事業本部 IoTソリューション事業部 IoT営業部 東日本IoT営業2課 池上真衣氏
数で圧倒的なのはLPガス国内のユースケースで今、圧倒的にボリュームがあるのがLPガスの検針だという。「全て合わせると今年度中には100万回線を超す見込みだ」(松木氏)。
日本瓦斯では、ガスメーターをオンライン化し、LPガスの使用量を可視化するNCU(Network Control Unit)「スペース蛍」の通信に、ソラコムのIoT向けデータ通信サービス「SORACOM Air for Sigfox」を採用。2021年3月までに約85万件に導入する計画が進んでいる。また、ミツウロコクリエイティブソリューションズとNECは、LPガスの検針、配送業務を効率化するソリューションを提供している。エンドユーザー宅のLPガスメーターにNECの「LPWA対応IoT無線化ユニット」を取り付け、Sigfoxを利用してLPガスメーターのデータを収集し、クラウド上に蓄積する。
これまでLPガスの検針は月に1回、作業員が各戸を訪問して行っていたが、こうしたソリューションによって人件費を抑えられ、ガスボンベ交換のタイミングも最適化できることから導入が拡大している。