PwCアドバイザリーは2021年1月21日、記者説明会を開き、「サステナブル・スマートシティ」参画企業の事業化支援を本格展開すると発表した。
同社は以前からスマートシティをはじめとした、持続可能な都市開発やインフラ関連プロジェクトを実証実験の段階から支援してきた。今後スマートシティプロジェクトは実証実験フェーズから実行フェーズに移行すると考え、今回の本格展開に至ったという。
PwCアドバイザリー 代表執行役の吉田あかね氏は「当社は、コロナ禍における社会ニーズの変化を踏まえ、スマートシティが何を目的とするか、そこで解決すべき社会課題は何なのかを明確にしたうえで、デジタルやデータアナリティクス活用などの解決方法を提示している。日本全国でスマートシティ実証実験が進んでいるが、さらに企業、各連合体、自治体においてスマートシティ事業化の機運が高まっている。それを実現していくために、具体的には、ジョイントベンチャーや合弁事業を生み出していくように、当社がお手伝いしていきたい」と話した。
PwCアドバイザリー 代表執行役 吉田あかね氏
スマートシティの現在地続けて、同社 ディレクターの石井亮氏が「サステナブル・スマートシティ参画企業の“事業収益化”と“データ活用”」と題した発表を行った。
PwCアドバイザリー ディレクター 石井亮氏
同氏はまず、スマーシティ市場の現在地について解説。一口にスマートシティと言っても、その分類、組み合わせは下図のように様々ある。ここで大事なのが、スマートシティ自体は、目的ではなく手段であり、都市の抱える諸課題を解決し、全体最適化が図られる持続可能な都市であるということだ。
多種多様なスマートシティ
世界では今、人口増加が進んでおり、世界人口に占める都市人口の割合は50%に上昇、 2030年には約49億人が都市で暮らすようになると予測されている。「急速な都市化が進んだことで、都市と都市の間で熾烈な競争が始まっており、COVID-19の収束後、さらに激化すると見られる。また、日本も含めた先進国で都市の老朽化や陳腐化が進んでいる中で、新たな都市や再開発が必要とされているためスマートシティの需要が増している現状がある」(石井氏)
そして、これからの都市に求められるのは、「いかなる危機や脅威に遭遇しても活動が継続可能な能力を備えたレジリエンスな都市」であり、それを構築できるイノベーションやサービス、ビジネスに投資家を含めた世界的な関心が集まっているという。
さらにSDGsの達成にも都市開発事業は大きく関わっており、社会貢献だけではなく、事業としても成長していけるという観点からも進める必要があるとした。
都市開発がSDGsの鍵を握る
サステナブル・スマートシティを目指すそのうえで、次世代型都市では「建物やインフラ等、都市空間におけるハード面の構成要素だけでなく、デジタルを整備し、データが扱えるようにすることでサービス&マネジメントを行うというソフトの要素が重要になる。このデジタルとサービス&マネジメントが全体を包括し、全てのレイヤーが統合された『サステナブル・スマートシティ』を作るためには、異なる産業同士の分野横断的な連携が鍵となる。さらに具体的に言えば資本提携やM&A、パートナリングが重要になる」と石井氏は述べた。
「サステナブル・スマートシティ」の構成要素と関連産業
また、リアルとバーチャルが融合するWith/After COVID-19の都市では、「従来のビジネスモデルが覆されるゲームチェンジが起こる可能性もある。そうした中で都市開発事業や、都市ビジネスをする際には、今後はリアルの世界とバーチャルの世界、あるいはデジタルとフィジカルを融合させ、包括的にデザインしながらビジネスを展開することも重要だ」という。
With/After COVID-19の都市ではリアルとバーチャルが融合
さらにサステナブル・スマートシティの実現には、サーキュラーエコノミー(循環型経済)の構築も求められるとし、その実現のためのステップを下図に示した。
サーキュラーエコノミーを実現する都市のライフサイクル