2021年から国内キャリアも導入を始める5G SA(スタンドアロン)により、モバイルネットワークは格段の進化を遂げる。ユーザーが受ける最大の恩恵は、ネットワークスライシングの実現だ。用途に合わせて最適な性能・機能を備えるネットワークスライスが使えるようになれば、eMBBやURLLC、mMTCの特徴を各産業で活かしやすくなり、VRやクラウドゲーム等のコンシューマーサービス開発も活性化するはずだ。
こうしたアプリ/サービス開発を促進するための新たな仕掛けが、5GC(5Gコアネットワーク)には盛り込まれている。「Network Exposure Function(NEF)」だ。5GCを構成するネットワーク機能(Network Functions:NF)を外部アプリに公開するもので、5Gの加入者情報やネットワークの状態変化等をアプリ側で詳細に把握できるようになるほか、外部アプリからNFの制御も可能になる。
NWインフラの情報を収益化現在のクラウドサービスやスマホアプリは基本的に端末の情報しか知ることができず、制御できる範囲も端末の機能に限られていた。5Gではそれが網機能にも及び、ネットワークとアプリがより密に連携することになる。
4GのコアネットワークであるEPCにも、実は同様のSCEF(Service Capability Exposure Function)という機能が存在したが、5G NEFではその機能が大幅に拡充されている。
NEFによる「網機能の開放」は、通信業界のビジネスを大きく変えるかもしれない。APIエコノミーを、通信キャリアが軸となって展開できる可能性が広がるからだ。ノキアCTOの柳橋達也氏は次のように話す。
「期待されるのは、インフラから得られる情報や知見を収益化すること。Webスケールの事業者が実践しているAPIビジネスをテレコムでも取り入れようという考え方がNEFの背景にある」
APIエコノミーとは、アプリ/サービスを連携させるための仕組みであるAPIを公開して、複数のビジネスをつなぎ合わせながら広がっていく経済圏のこと。Google Mapを利用した配車サービスやゲームがその代表例だ。APIを利用する側は、他社が開発した機能を使うことで迅速にビジネスを立ち上げられる。公開する側も他社が利用してくれることで新たな収益を得られる。