「ギガらく５Gを始めて2年ほど経ちますが、当初はローカル５Ｇとは何ですかという質問が多く、基礎から説明していました。最近は8～9割の方は知っておられます。Wi-Fiの更改期なので検討したいとか、製造工程の見直しに組み込みたいとかの声を多数いただき、確実にICT担当者の選択肢に入ってきていると思います」

こう語るのは、NTT東日本のローカル５Ｇ事業の立ち上げから携わってきた、ビジネス開発本部無線&IoTビジネス部５Ｇ/IoT企画担当の大石卓哉担当課長だ。

５Ｇは「超高速」「超低遅延」「多数同時接続」の3大特徴を持つ移動通信規格。その５Ｇを企業が自社でプライベートに利用できる制度が「ローカル５Ｇ」で、2019年からスタートした。大いに期待が高まったが、システム価格が高価といわれたこともあり、様々なタイプの実証実験（PoC）は行われるが、企業の実導入はなかなか進まない状況が続いた。

そうした市場に大きなインパクトを与えたのが、22年5月に発表されたNTT東日本のマネージド・ローカル５Ｇサービス「ギガらく５G」だ。「月額基本利用料30万円」という料金はそれまでの「ローカル５Gは高いので大企業が導入するもの」という市場の空気を一変させ、中堅企業・中小規模企業にも身近なものとなった。

ただし、料金の安さだけで、市場の局面を変えたわけではない。「企業のお客様が本当に使いやすく、導入効果の上がるシステムにするため、様々な要望に向き合い、数えきれないくらいの工夫を積み重ねてきました。そうした取り組みが浸透してきたのではないでしょうか」（大石氏）

「ギガらく５Ｇ」の3つの特徴

「ギガらく」というと大ヒットした「ギガらくWi-Fi」を思い出すが、そのコンセプト「気楽に始めてすぐ使える」を踏襲したのがギガらく５Ｇだ。

第1の特徴は、キャリアグレードのトータルITO（ITアウトソーシング）ということだ。

図表1がギガらく５Ｇのシステム構成だ。目にふれるRU/アンテナは屋内用・屋外用があり、敷地の各所に設置され電波を発射する。それを束ねるのが５G設備で、19インチラックに一括収納されている。CU・UPF、DU、整流器などの装置だ。

図表1　システム構成例

このシステムが正常に稼働するよう監視、制御、認証しているのがクラウドの５Gコアである。クラウド上にはお客様情報は一切流すことなく、閉域VPN通信を用いて機器をコントロールしているのでセキュリティは安全だ。

５Gシステムは企業内サーバーとつながり、データ活用で業務に直接生かされるようになる。

企業がローカル５Ｇを導入するには、免許取得、ネットワーク設計、システム構築に加え、トラブル時のサポート・保守機能も備わっている必要があるが、これらをワンパッケージのトータルITOで提供している。

第2の特徴は、導入しやすい利用料金という点だ。

「月額基本利用料30万円」のインパクトと述べたが、正確な料金は図表2のようになっている。2年契約で基本利用料金は30万6900円。設置するアンテナ数によって1台2万6400円加算される。5年総額で約2200万円と安心の料金となっている。

図表2　提供料金

工事費・トータルITO含みのサブスク型の定額で分かりやすい料金だ。アンテナの種類・数の変更はオプション対応となり、エリアをもっと広げたいなどの要望に柔軟に対応できる。

ローカル５Gのコストは一般に高いとされているが、ギガらく５Gを提案すると「免許申請費用や保守も含めてこの料金は安い！」という声をいただくことが多いという。

第3の特徴は準同期TDDに対応しアップリンク最大466Mbps、ダウンリンク最大988Mbpsを提供する点だ。

ギガらく５Ｇは最新規格に準拠し、本格的な５ＧSub6スタンドアローン（SA）機能を提供する。なかでも、準同期TDDに対応しアップリンク最大466Mbpsでの通信が可能だ。これは、企業ユーザーの声を真摯に聞く中で生まれたものだ。

モバイルキャリアの５Ｇは一律に上り下りのスロット数が決められているが、ローカル５Ｇは上り下りのスロット数が変えられるので、どちらかをアップすることが出来る。ギガらく５Ｇでは、現場の精細映像を重視している企業には準同期TDDでアップリンク最大466Mbpsまで性能を上げることに成功している（同期TDDではダウンリンク最大1,488Mbpsをマーク） 。