製造業ではCPS/デジタルツインの活用が、今や世界的な潮流となっている。
なかでも先行しているのがドイツだ。日本と同様、高齢化や労働人口の減少といった課題を抱えるドイツは、製造業の生産性向上と競争力強化を目的として「Industrie4.0(インダストリー4.0)」を推進している。その本質はCPSであり、IoTはフィジカルとサイバーをつなぐ手段に位置付けられる。
例えば独シーメンスは、製品開発・製造計画・製造の各工程で集めたデータを用いてサイバー空間上でシミュレーション・予測・最適化を行い、製品および製造の継続的な改善を図るデジタルツインのソリューション提供に力を注ぐ。
自社の工場でもデジタル化を進めており、バイエルン州アンベルクの基幹工場では5000万カ所の製造工程でデータを収集する仕組みを構築した。その結果、20 年前と従業員数はほぼ同じにもかかわらず、生産量は約14倍向上し、1日当たり120アイテム以上の製品を生産できるようになった。また、品質検査にAIを活用することで製品100万個当たりの良品数が99万9990 個という高い品質を維持するとともに、品質検査装置が不要になり、1ライン当たり年間2000万円のコスト削減を実現した。
日本の製造業でもCPSの成功事例が徐々に出始めている。
パナソニックはCPSを目指す活動の一環として、多くの工場にて、生産シミュレーターを活用しAGV(無人搬送車)の導入や生産の流し方などを検討している。電池事業の一例では、生産シミュレーターを活用することで従来の1/10の時間で設備投資計画を判断できたという。