IoTに適した無線通信技術LPWAの1つであるSigfoxは、2017年にKCCSが日本国内でのサービスをスタート。そのネットワークは2年間で、人口カバー率95%に達した(2019年3月時点)。また、パートナー企業からは多種多様なSigfox対応デバイスが登場。全国各地で様々な実証実験、トライアルが行われ、ユースケース開拓とニーズの掘り起こしも進んだ。
人工カバー率は95%を達成。今後は、ゲートウェイのレンタルにより、屋内のSigfoxエリア化も促進する
基調講演に登壇した、KCCS 取締役 LPWAソリューション事業部長の松木憲一氏はこれまでの取り組みを「ホップ、ステップの2年間」と振り返ったうえで、「いよいよジャンプの段階に来ている」と話した。
それを裏付けるSigfoxの実用例が次々と出てきている。
最新のユースケースとして松木氏が紹介したのが、関西エアポートが国内空港で初めて導入した「Customer Feedback Device」だ。関西国際空港の利用客の満足度を測定するデバイスで、チェックインカウンターや保安検査場等に85台を設置している。
また、埼玉県飯能市では鳥獣害対策用のわなの作動を遠隔で検知するシステムが採用された。イノシシ等の害獣がわなにかかると、その情報がSigfox経由で通知される仕組みだ。
大阪ガスでは、工場や店舗のメーターを定期的に計測し、過剰な利用を検知するとメール等で知らせる簡易計測サービスにもSigfoxが採用されている。既存のメーターに後付けしてスマート化できるSigfox通信モジュールを利用しているという。
KCCS 取締役 LPWAソリューション事業部長の松木憲一氏(左)と、
LPWAソリューション課 責任者の宮下純一氏
Sigfoxの強みは「位置情報」
様々な分野でSigfoxの利用が広がっているなか、特にKCCSが力を入れているのが物流向けのIoTソリューションだ。輸送用のコンテナやパレット、ボックス/パーセル等にSigfox通信モジュールを取り付け、その位置情報を収集。管理コストの低減や、利用効率の向上、紛失防止に役立てる。
こうした用途にSigfoxが適している理由について、LPWAソリューション課 責任者の宮下純一氏は「コンテナやパレット等そのものが高価ではなく、測位デバイスや通信コストを低く抑えなければならない」ことを挙げた。通信料が安く、安価なデバイスを調達しやすいSigfoxは、まさにうってつけというわけだ。
また、Sigfoxそのものが測位機能を備え、またそれを強化している点も大きな理由という。下写真は、Sigfoxが備えるジオロケーションテクノロジーを示したものだ。
Sigfox基地局で測位するNativeのほか、Wi-Fi測位、ビーコン測位技術も追加される
「Atlas Native」は、Sigfox基地局が受ける電波の受信強度でデバイスの位置を測るもので、精度は数kmと低いが、屋外でも屋内でも使えること、GPS等が不要でSigfox通信機能だけで位置測位が可能なこと、消費電力が少ないことなどが利点という。また、2019年夏には、Wi-Fi電波を使って最大200mの精度でデバイスの位置が測れる「Atlas Wi-Fi」がリリースされる。これも屋内外で利用が可能だ。
2020年には新技術「Sigfox Bubble」も登場する。「Sigfoxビーコン」とも呼ばれる通信機能であり、デバイス間でSigfox電波の強度によって位置情報を取得する。最大10mと高精度な位置測位が可能だという。
世界中どこでも1契約でつながるグローバルローミング
さらに宮下氏は、国際物流に適した特徴として、Sigfoxのグローバルローミングサービス「Sigfox Monarch」も紹介した。
世界60カ国で利用できる(2019年5月時点)Sigfoxは、国によって利用する周波数が異なり、現時点で6種類の周波数を用いているという。Sigfox Monarchは、この周波数切替を自動的に行う機能だ。Sigfoxデバイスが異なる周波数帯を用いるエリアに移動した際に、設定変更等の作業をすることなく自動的に、移動先のSigfoxへシームレスにつながる。
このMonarchはすでに、ルイビトンのバッグ追跡サービスにも採用されている。