KCCSブースには、人やモノの移動を追跡・監視するトラッキング用デバイスや、センサーデータを収集・可視化するIoTプラットフォームなど、IoTシステムを構築しようとする場合に“すぐに使える”実用的なSigfox関連ソリューションの数々が展示されている(《前編》を参照)。
ただし、それらを実際に活用するには、データを安定的にクラウドやIoTプラットフォームに送ることができるネットワークが不可欠だ。《後編》では、この「通信」にフォーカスして、同ブースの展示を紹介しよう。
オプテックスが展示しているのは、通信機能を持たない既存の機器やセンサーに“後付け”して、Sigfox通信機能を付加することができるIoT無線ユニット等だ。センサーやスイッチ等の機器から出力される接点信号やパルス信号を、Sigfox経由でクラウドに転送できる(下写真)。
オプテックスの「IoT無線ユニット」
これを用いることで、新たに通信機能付きのセンサー等を開発する必要がなくなるため、IoTを早く立ち上げることができる。燃料タンクの残量通知やガスメーターの遠隔監視等に使われているという。
加えて、ポールや柱の状態を遠隔監視するための「屋外用 傾斜・揺れセンサー」も参考出品している。街路灯や電柱等の老朽化・状態監視に使える。電池駆動であるため設置工事が簡単な点が特徴だ。
業界初! 「Sigfox+802.15.4k/4g」の3モード無線LSI
ラピスセミコンダクタは、SigfoxとIEEE802.15.4k/4gの3モードを1チップに搭載したIoT向けLPWA無線LSIを展示している。同社によれば業界初の製品で、用途に応じて異なる通信モードを選べるのが利点だ。
ラピスセミコンダクタが展示している3モード無線LSI
国内のSigfoxネットワークは人口カバー率が95%を超えているが、それでも山間部等の人が少ない場所には不感知エリアもまだかなり存在する。そうした場所でも、このチップを搭載した通信モジュールならば、IEEE802.15.4kでブリッジ通信を行い、Sigfox圏外から圏内へと無線ネットワークをつなげることができる。また、一般的なLPWAよりも広帯域な通信が行えるIEEE802.15.4gを使えば、ソフトウェアの更新も可能だ。
ソンジ インダストリアル(旧WISOL)は、多様なSigfox通信モジュールを紹介している。こちらも目を引くのは、Sigfoxに加えてBluetooth Low EnergyやWi-Fi、GPS等の複数の通信機能を搭載する「コンボ モード モジュール」だ。
ソンジ インダストリアルは、Monarch対応モジュールも開発中
また、前編で紹介したSigfoxの新グローバルローミング技術「Sigfox Monarch」に対応したモジュールも開発中であり、日本国内では2019年7~8月ごろに提供が可能になるという。
利用シーンに合わせたアンテナで「つながるIoT」
最後に紹介するのは、IoTデバイス向けのアンテナだ。
Sigfoxパートナーであるスタッフは、利用シーンに応じて選べる各種のアンテナを紹介。ブースには、デバイス内蔵型から防水仕様の外部アンテナ、板金アンテナなど様々な製品が並ぶ。
スタッフがラインナップするアンテナ製品群
IoTデバイスや基地局は多種多様な環境に設置され、かつ、長期間にわたって安定的に通信できなければならない。設置場所に合わせたアンテナ選びは非常に重要だ。スタッフは自社内に電波暗室や評価設備も保有しており、IoTデバイスを持ち込んで電波の可視化や調整等を行ったり、LPWAやLTE/5Gのカスタム設計も可能という。
日本アンテナも、IoT機器に合わせた最適なアンテナを提案することで、通信性能の向上を支援している。説明員によれば、デバイス内において基盤とアンテナの距離や向きによっても性能は大きく変わるという。アンテナそのものの性能だけでなく、こうした設計、チューニングが重要だ。
デバイス筐体の内部に貼り付けられるフィルムアンテナ
同社は、アンテナの開発・提案だけでなく、長期間安定的に利用できるようにアンテナ設置工事も行っており、また、通信状況が悪化した場合には電波を見える化して原因を究明する不感対策も行っている。