IPv6マルチプレフィックス問題とは何か?
まず、図表1に従来のBフレッツとISPのIPv4での接続図を示した。NTTのBフレッツ網は直接インターネットにはつながっておらず、インターネットとの接続はISPが提供している。
図表1 NGNにおけるIPv6マルチプレフィックス問題 |
IPアドレスに着目すると、ユーザーにはNTT東西とISPの両方からIPアドレスが配布されている。この2種類のIPアドレスは、Bフレッツ内のサービスを受けるため、およびインターネットに接続するためにそれぞれ使われている。その制御をするのが、ユーザー宅に置かれるブロードバンドルーターである。ブロードバンドルーターのNAT機能によってアドレスを付け替える際に、行き先に応じて2種類のIPアドレスを使い分けているのだ。
それが、IPv6になるとどうなるか。IPv6の場合はユーザー宅のブロードバンドルーター(NGNの場合はホームゲートウェイと呼ぶ)にNATの機能はなく、端末に直接IPv6アドレスが付与される。従って、アドレスの配布がIPv4と同様の構造であれば、図表1の右側に示したように端末にはNTT東西から配布されたものとISPから配布された2種類のIPv6アドレスが付くことになる。ここで端末は、NGN内部のサービスを受ける時とISP経由でIPv6インターネットへ向かう時には、発アドレスとしてそれぞれ異なったアドレスを設定しなければならない。しかし、通常のPCのような端末には宛先に応じて発アドレスを選択するような機能は準備されていないため、うまくルーティングできなくなってしまう。
これが「IPv6マルチプレフィックス問題」である。
トンネル方式とネイティブ方式
この問題を解決するために、NTT東西とISPの代表が2年以上にわたって長く協議を続けた結果、2009年8月にようやく「トンネル方式」と「ネイティブ方式」の2つの方式が決定された。この2つの方式について、それぞれ図表2、図表3に示した。両方式とも現在NTT東西とISPが準備を進めており、2011年4月のサービス開始を目指している。
(1)トンネル方式
端末に付与するIPv6アドレスをISPからトンネル経由で割り振られたものだけとし、NGN内のサーバーなどとの通信時はホームゲートウェイに外付けされる「アダプタ」のNAT機能でアドレスを付け替える方式である。従来のIPv4とほぼ同じ方式であるが、既存のNGN加入者が新たにIPv6接続を始めるためには、NTT東西などが提供する予定の「アダプタ」を入手して接続する必要がある。
図表2 「トンネル方式」の仕組み |
(2)ネイティブ方式
ISPはユーザーに直接IPv6アドレスを配布せず、3社が選定された「ネイティブ接続事業者」にIPv6アドレスの管理と運用を委託する。ユーザーがISPとインターネット接続を契約すると、ユーザー宅内にはそのISPが運用を委託するネイティブ接続事業者のIPv6アドレスだけが付与される。ユーザーはIPv6インターネットへの接続時も、NGN内のサーバーなどとの通信時もこのIPv6アドレスを使用する。そのため、NGN内部ではNTT東西が持つIPv6アドレスに3社のネイティブ接続事業者のIPv6アドレスを加え、4種類の異なる体系のIPv6アドレスが混在してルーティングされることになる。
図表3 「ネイティブ方式」の仕組み |
なお、この「ネイティブ接続事業者」には、2009年12月に、いずれもIX事業者である以下の3社が選定された。
・BBIX
・日本インターネットエクスチェンジ(JPIX)
・インターネットマルチフィード
国内のISPは、NGNをアクセス網としてIPv6インターネット接続を提供する場合、このトンネル方式、ネイティブ方式、あるいは両方を選択することになる。