NGNで画期的な「P2P-VPN」を実現――「IPv6ネイティブ接続」が持つ可能性

NTT東西のNGNが抱えるIPv6マルチプレフィックス問題解決のため導入される「IPv6ネイティブ接続」には知られざる可能性がある。低コストで広帯域な「P2P-VPN」を自由に構築可能なのだ。

P2P-VPNの料金レベル

次に料金について考えてみる。

IPv6ネイティブ接続の料金自体はまだ公表されていないが、基本的にはISPが提供するインターネット接続のサービスであるので、現状の料金(多くは2000円/月程度)と大差ない金額に、NTT東西が提供する「網内折り返し機能」の料金(金額は未発表であるが、それほど高額とは考えられない)を加えたものとなるはずだ。全体としてはアクセスの基本料金(ビジネスタイプで約4万円/月、ファミリータイプで約5000円/月)との合計になる。これで数10Mbpsの帯域が使えるのであれば、かなりの低料金である。

さらに、このVPNは安心・安全なネットワークであるNGNに閉じた使い方であり、セキュリティの面での懸念も少ないはずだ。従って、企業のイントラネット構築などの際の新たな選択肢として大きく浮上してくる可能性がある。

IPv6ネイティブ接続を利用したP2P-VPNの利用形態と料金などをまとめて図表5に、データコネクトとの比較を図表6に示した。

図表5 IPv6ネイティブ接続におけるP2P-VPNの構成例
図表5 IPv6ネイティブ接続におけるP2P-VPNの構成例

図表6 データコネクトとIPv6ネイティブ接続の比較
図表6 データコネクトとIPv6ネイティブ接続の比較

P2P通信の課題と今後への期待

これまで解説したようにIPv6ネイティブ接続を利用したP2P-VPNは、低コストと高速・広帯域性の点で従来にない画期的なサービスとなる可能性がある。

ただし、課題もある。NGN内のP2P通信はNTT東西のそれぞれの網内でしか利用できず、そのままでは東西間がつながらないのだ。

全国に分散する拠点をつなぐVPNを構築するためには、何らかの方法で東西間を接続する必要がある。単につなぐだけであればインターネット経由でも可能だが、NGN内での高速・広帯域性を活かすためには、東西間の帯域を確保した通信と組み合わせて利用したいという要望があるだろう。IPv6ネイティブ接続のサービスが始まる2011年4月頃までには、東西間で利用できる通信インフラを持つ事業者が、そのためのサービスの提供を発表するのではないかと考えられる。

また、今回紹介したIPv6ネイティブ接続に限らず、NGNのNTT東西間接続には多くの制限がある。この点については、現在総務省の「光の道」構想の中で議論されている「NTT東西のアクセス網の在り方」と密接に関係する課題でもある。今後は、NGNを取り巻く健全な競争環境をさらに整備し、NGN自体がより価値のある使いやすいネットワークとして発展していくことを望むものである。

月刊テレコミュニケーション2010年9月号から一部再編集のうえ転載(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

今井恵一(いまい・けいいち)

NECに入社以来、交換システムの開発、IPv6などインターネット関連の技術マーケティング、企業向けオフィスソリューションの企画などを手がける。2006年よりテレコムサービス協会での活動を始め、現在は政策委員会委員長として、NGNの利活用や接続ルールなどを中心に積極的な政策提言を行っている。

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