ミッションクリティカルなユースケースにも対応できる自営無線として、海外で導入が広がりつつある「プライベートLTE」。では、日本でプライベートLTEを実現する方法はあるのだろうか。
約3年前からプライベートLTEの事業化に取り組んできた富士通で、ネットワークソリューション事業本部モバイルソリューション事業部長を務める水野晋吾氏は「本当に国内で立ち上がるか、まだ模索している段階」としながらも、その実現手段として2つの技術に注目していると明かす。
富士通 ネットワークソリューション事業本部
モバイルソリューション事業部長 水野晋吾氏
1つめが、デジタルデバイドの解消などを目的に2008年に導入された地域BWAだ。市町村単位の免許制となっており、2018年3月1日時点ではCATV事業者や自治体など63社・団体に利用されている。当初から用いられてきたWiMAXに加えて、2014年には高度化システムとしてLTE(AXGP、WiMAX R2.1 AE)の利用が認められたことで、「プライベートLTE」に活用できる可能性が生まれた。
地域BWAの運用周波数帯(2575~2595MHz)は、LTEの国際バンドの2.5GHz帯(日本ではUQコミュニケーションズとWireless City Planningが利用)に包含されているため、市販のスマートフォンやデータ端末が活用でき、ネットワーク機器も調達しやすい利点がある。
とはいえ、単なるインターネット接続にとどまらない地域貢献型サービスの提供が免許付与の条件となっているほか、免許が受けられるのは各市町村で1社に限られるなど、利用のハードルは高い。
既存LTE端末をそのまま利用2つめが、今秋から製品展開が始まるLTEベースの新デジタルコードレスシステム「sXGP」だ。
初のTELEC認証sXGP端末
「BLADE V8Q」(ZTE製)
sXGPは、PHSやAXGPの標準化を行ってきたXGPフォーラムが、事業所コードレスに用いられている自営PHSの後継として規格化した技術である。日本でデジタルコードレス電話に利用されている1.9GHz帯自営無線バンド(1893.5~1906.1MHz)が、チャイナモバイルの商用LTEサービスに使われている1.9GHz帯(バンド39)に包含されることに着目。仕様を共通化することで、すでに市場で大量に流通しているバンド39対応端末を子機として利用することを狙って開発された。実際、sXGPでは、端末メーカーが改めてTELEC認証を取得する必要はあるものの、市販のスマホに一切手を加えることなく利用できる。
新たなデジタルコードレス電話として規格化されたsXGPだが、最近はむしろ、免許を取得せずに利用できるアンライセンスバンドIoT無線システムとしての期待が高まっている。
「sXGPの用途にはもちろん事業所コードレス電話の置き換えがあるが、それはワン・オブ・ゼム。音声だけでなく、監視カメラやデジタルサイネージのような大容量データ伝送まで1つのネットワークで対応できるアンライセンスバンドのIoT無線システムであることがsXGPの本質」と今年1月に初のsXGPアクセスポイント製品を投入したバイセルズ・ジャパンJapan BD Directorの日比紀明氏は語る。
バイセルズ・ジャパン Japan BD Director 日比紀明氏
プライベートLTEの構築手段として世界市場で注目を集めているMulteFireは、法整備がなされていないため国内ではまだ利用できない。そのため日本では当面、sXGPがプライベートLTEの主役となる。