大規模なWebサービスのインフラにおける課題の1つとして、東西方向、つまりサーバー間のトラフィックの増大が挙げられる。サービスを提供するための機能が様々なサーバーに分散しており、ユーザーからのリクエストに対して多数のサーバー間での通信が発生するためだ。
この課題の解決策として広まっているのが、各ラックのスイッチ(リーフ)とスパインスイッチの2階層でネットワークを構成するCLOSアーキテクチャである。東西トラフィックのパフォーマンスを最適化でき、スケーラビリティも高いことから、すでに多くのハイパースケールプロバイダーで採用されている。
日本を代表するハイパースケールプロバイダーであるYahoo! Japanも、Hadoop基盤のネットワークにCLOSアーキテクチャを採用する。その設計や運用において活用されているのが米Apstra社の「AOS」である。
マルチベンダー環境で意図通りApstraは4年前に創業した企業で、インテントベースネットワーキングを実現するプラットフォームとしてAOSを開発、ファーストバージョンを2016年にリリースしている。
「AOSは、ユーザーの意図(インテント)に即した形で、ネットワークをシンプルに構築・運用できるソリューションだ。ユーザーの意図に沿ってネットワークを構築し、さらに運用の中で意図から外れた部分があれば、それをフィードバックする。従来もネットワーク機器単体で故障を検知する仕組みはあったが、AOSはネットワークのあるべき姿と照らし合わせた上で、例えばトラフィックがあるスイッチに偏っているなどの問題を検知してフィードバックできる」
アプストラ・ジャパン カントリーマネージャである田中克和氏は、AOSの特徴をこのように説明する。
図表 AOSのインテントベースネットワーキングの仕組み
インテントベースネットワーキングはシスコシステムズやジュニパーネットワークスも提唱し、製品への実装を進めているが、AOSの大きな特徴はそれをマルチベンダー環境で実現する点だという。
Apstraでセールスとビジネス開発の責任者を務めるデイブ・バトラー氏は次のように述べる。
「いくつかのスイッチベンダーから同様のプロダクトは提供されているが、様々なベンダーのプロダクトを混在させた上でデプロイから監視までを実現しているのがAOSの特徴だ。大規模データセンターでは、様々なベンダーのスイッチなどが混在することが一般的だろう。AOSであれば、そのような環境でもインテントベースネットワーキングを実現可能である」