ドコモの音声AI戦略を大野役員に聞く「対話型AIであらゆる生活を革新」

5G時代に向けて、NTTドコモはどんなイノベーションを起こそうとしているのか。その重要な柱の1つに位置づけられているのが、音声インターフェースを活用したAIエージェントだ。アマゾン、グーグル、アップルなど、ITジャイアントがしのぎを削るAIエージェントへの取り組みについて、執行役員 R&D戦略部長 イノベーション統括部長 兼務の大野友義氏に聞いた。

――音声認識AIアシスタントの開発競争が激化していますが、2012年から「しゃべってコンシェル」を提供してきたのがNTTドコモです。今年4月に策定した中期戦略2020「beyond宣言」でも「究極のAIエージェントをすべてのお客さまへ」と宣言しました。まずは、ドコモが音声認識AIアシスタントに注力する理由を改めて教えてください。

大野 「生活のあらゆるシーンをサポートする、その人だけのパートナーを作りたい」というのが、我々が考えてきたことです。

絶えず持ち歩いているスマートフォンは、その人にずっと寄り添っています。つまり、我々はお客さまとのコンタクトポイントを24時間365日持っているわけです。ドコモは「お客さまの生活を一番支援できる立場にいるだろう」と以前から力を入れてきました。

――これまで主としてスマートフォン上で提供されてきた音声認識AIアシスタントですが、最近新しい潮流が起きています。「Amazon Echo」をはじめ、グーグルやLINEなど様々なプレイヤーがスマートスピーカーを投入しています。

大野 我々もスマートフォンだけが最適なデバイスだとは考えていません。例えば、家の中であればテレビが最適なデバイスかもしれませんし、クルマの中ではカーナビかもしれません。また、ぬいぐるみ型がいいという方もいるでしょう。

社内でもいろいろと議論したのですが、Amazon Echoのようなマイク・スピーカー型のデバイスですべて完結できるかというと、やはり難しいです。例えば、洋服を買いたいとき、音声だけでは洋服の柄などを説明しきれませんよね。何らかの表示デバイスが必要になります。そして、「ディスプレイが必要ならば、スマホでもいいのではないか」と議論がまた振り出しに戻るわけです。

ですから、ディスプレイを搭載した「Amazon Echo Show」が発表されたときは、「僕らと同じ壁にぶつかっていたんだな」と思いました。

要は適材適所であって、おそらくはその場その場に最適なデバイスがあるのだろうと考えています。

――スマートスピーカーも、あくまで最適なデバイスのうちの1つにすぎないという見方ですか。

大野 ええ、スマートスピーカーがすべてではないでしょう。今後、多様なデバイスが出てくるのだろうと思っています。

月刊テレコミュニケーション2017年10月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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大野友義(おおの・ともよし)氏

1964年1月生まれ、東京都出身。89年3月、東京理科大学大学院 工学研究科を修了後、同年4月に日本電信電話(NTT)に入社。99年1月にNTTドコモ無線ネットワーク開発部 主任技師、2001年4月に研究開発企画部 主任技師、02年10月に同部 担当部長、05年4月にグローバルネットワーク開発部 担当部長、06年7月にサービス&ソリューション開発部 担当部長ののち、12年6月にサービス&ソリューション開発部長。14年7月、サービスイノベーション部長を経て、17年6月から現職

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