NEC IoT戦略室長 望月氏インタビュー「IoTとAIで圧倒的な社会価値を創造」

超少子高齢化社会に突入し、人手不足などの深刻な課題に突き当たる日本。その一方、世界の人口は急増を続けており、エネルギーや食糧、水などの需要が爆発的に増加する見込みだ。そこでNECで執行役員 兼 IoT戦略室長を務める望月康則氏は言う。「ケタ違いの圧倒的な効率化が、社会全体に求められている」IoTとAIによる社会価値の創造に取り組むNECのビジョンと強みを聞いた。

――IoTをめぐる動きが大変活発になっていますが、IoTの現状についてどう見ていますか。

望月 製造業など、IoTで業務プロセスを改善することにより、定量的なコスト効果が出るところから、IoTが導入され始めたと感じています。単なるコスト削減にとどまらず、顧客体験の向上や経営変革につながるIoTの事例もいくつか見え始めてきました。

ただ、やはり現在はまだ黎明期です。産業構造や人々の暮らしそのものが変わるような、IoTによる本当の変化はこれから本格的に始まると考えています。

――今から大変革が起こると。

望月 スケールの大きい話になりますが、地球の人口は2050年に現在の3割増し、90億人を突破すると予想されています。特に、都市の人口増加ペースは急激で、2050年には現在の1.8倍の63億人に達します。その結果、エネルギー需要は1.8倍、水需要は1.6倍、食料需要は1.7倍になると言われています。要するに、地球をもう1つ分支える必要が出てくるわけです。他方、高齢化が進む日本では、労働人口が今後急速に減少していきます。

つまり、個々の企業におけるビジネスの効率化といったことを超え、ケタ違いの圧倒的な効率化が、社会全体に求められているわけです。そして、この課題に対して、解をもたらすことができるのがIoTです。

NEC 執行役員 兼 IoT戦略室長 望月康則氏

他社にはない尖ったAI技術――IoTに対する非常に高い期待が分かりましたが、NECの経営戦略におけるIoTの位置づけはどうなっていますか。

望月 半導体事業や携帯端末事業、コンシューマ向けインターネットプロバイダー事業をスピンアウトするなど、NECの経営ポートフォリオが変わるなか、我々は2014年に7つの社会価値創造テーマを策定し、社会ソリューション事業に取り組むと全社で決めました。「地球との共生」「安全・安心な都市・行政基盤」「安全・高効率なライフライン」などの7テーマがありますが、これらの社会価値創造を従業員全員で目指していくうえで、IoTは“ど真ん中”の価値出しのメカニズムだと捉えています。

――IoTを基盤に、社会価値を創造していこうというわけですね。

望月 そうです。加えて、「鶏が先か、卵が先か」みたいな話かもしれませんが、IoTに注目が集まり始めた時期は、NECの直接のお客様を、情報システム部門から事業部門、いわゆるLoB(Line of Business)の方へ広げていく時期とも重なっていました。LoBのお客様に、どうやって価値を提供していくか。まさに、IoTはそこに向けた重要なビジネスのやり方だと認識しています。

――IoTに注力しているのはNECだけではありません。多くの競合他社が取り組んでいますが、NECのIoTソリューションの強みは何ですか。

望月 まずはIoTで価値を創出するために重要なAI技術です。我々は「NEC the WISE」というブランドで最先端のAI技術群を体系化しており、他社にはない尖った技術を数多く持っています。

――NECのAI技術というと、米NISTのベンチマークテストで4回連続の世界一にもなっている顔認証技術が特に有名です。

望月 「NEC the WISE」では、AI技術を「見える化」「分析」「対処」の3領域に分類しており、顔認証技術は「見える化」にあたります。

アルゼンチンのティグレ市では、街中の監視システムにNECの顔認識技術を導入することで、車の盗難率を80%減らすことができました。また、ティグレ市では、ひったくりなどの犯罪につながりやすいバイクの2人乗りの検知などにも、NECの画像認識技術を使っています。

月刊テレコミュニケーション2017年3月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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望月康則(もちづき・やすのり)氏

1987年にNEC入社、半導体とナノテクノロジーの研究開発に従事。研究部門長として先端LSI、メディア情報処理、ビッグデータ分析関係の情報科学等の研究成果の事業化を推進し、2011年に中央研究所理事に就任。2013年には全社の新事業強化のために新設されたビジネスイノベーション統括ユニットに参画し、全社技術戦略を担当。2015年、NECのIoT事業を推進するIoT戦略室室長に就任、2016年、執行役員就任、現在に至る。東京大学工学系研究科博士課程卒

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