NTT R&D フォーラム 2017講演レポートNTT研究所は、IoTのサイバー脅威にこう対抗する!

NTT セキュアプラットフォーム研究所長の大久保一彦氏は、「NTT R&D フォーラム 2017」で、「これまでのやり方はもう通用しない!IoT時代に蔓延るサイバー脅威の一歩先行く革新技術」と題して講演した。NTTの研究所は、今後ますます深刻化するIoTのサイバー脅威に対抗すべく、どのような技術の研究開発に取り組んでいるのだろうか。

セキュリティ技術を「守り」だけではなく「攻め」にも
NTTの研究所では、サイバーセキュリティ技術を「守り」だけではなく、「攻め」に応用するための研究開発にも力を入れている。

IoTビジネスの推進にあたって、課題の1つとしてよく挙がるのが、個人情報に代表される機微情報の取り扱いだ。「機微な情報をいかに安全に利活用できるかが、今後のビジネスのカギになる」と大久保所長は話したうえで、サイバーセキュリティで培った暗号技術がその解決策になるとした。

大久保所長がまず紹介したのが、NTTが開発した「Pk-匿名化」という技法だ。個人の特定を避けるための匿名化技法としては、「丸める技術」(大久保所長)が一般的だ。例えば、「東京都新宿区」だったら「東京都」、「41歳」であれば「40代」と丸める。「個人は特定できなくなるが、統計データを取ったとき、使えるデータになるのか。データの有用性という点では残念な世界だ」と大久保所長はその問題点を指摘した。

これに対して、Pk-匿名化は、属性のシャッフル・入れ替えをすることで、個人を特定できなくする。「データは丸めていないので、様々な統計処理にも使える。安全性と有用性を両立できる技術だ」という。

NTTが開発した匿名化技法「Pk-匿名化」の概要
NTTが開発した匿名化技法「Pk-匿名化」の概要

さらに、「例えば医療系のデータなど、匿名化しても外には出したくないデータ」を活用可能にする技術もNTTにはある。「暗号化したデータを復号化せずに、そのまま統計処理を行い、その計算結果を出力できる」秘密計算という技術だ。

東北大学などと行った実証実験では、複数の医療機関・研究機関が持つゲノムデータを互いに開示することなく集約。ヒトの遺伝子変異と疾病の関連性について分析を行い、それぞれの医療機関・研究機関に分析結果を提供できたという。

秘密計算を使うと、暗号化したままデータを分析できる
秘密計算を使うと、データを暗号化したまま分析できる

せっかくIoTで様々な情報を収集・蓄積しても、それが有効活用できないのであれば、IoTビジネスは発展しない。

大久保所長は、イギリスや米国と比べて、日本のオープンデータ活用が大きく出遅れていることを紹介。そして、サイバーセキュリティ技術の応用によりデータの安全な利活用を実現することで、IoTの「攻め」にも貢献していく考えをアピールした。

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