携帯電話市場は今や、MVNO抜きには語れないと言っても過言ではない。それほどまでに、MVNOの存在感や認知度は高まっている。
調査会社シード・プランニングによると、「SIM型」(MVNO事業者がコンシューマー向けに提供する格安SIM)市場は2016年度の880万契約から、2017年度は1200万契約まで拡大する見込みだ(図表)。
図表 独自サービス型SIMの市場規模実績および予測(契約回線数) |
MVNOの成長を後押ししているのが、総務省の一連の施策だ。MVNOがMNOと対等に競争するうえで妨げとなっていたMNOによる端末の過剰な値引きを禁止するガイドラインが2016年4月に施行。また、11月に公表された「モバイルサービスの提供条件・端末に関するフォローアップ会合」の取りまとめでは、MVNOがMNOに支払うモバイル接続料のさらなる低廉化の方向性が示された。
MVNOで進む実店舗展開このようにMVNOには強力な追い風が吹いているが、必ずしもビジネス自体は順調というわけではない。加入者は増えているものの収益が上がらず、厳しい経営状況にあるMVNO事業者が少なくないといわれる。
日本通信は2016年にコンシューマー向けサービスから事実上撤退したが、同様の流れは2017年も続きそうだ。
シード・プランニングリサーチ&コンサルティング部エレクトロニクス・IT第1チーム部長主席研究員/コンサルタントの杉本昭彦氏は「楽天モバイルのようにリアルの店舗を作り、顧客接点を強化している事業者が今後は顧客獲得に有利になるだろう」と予想する。
MVNOのユーザーがITリテラシーの高くない層へと拡大していることで、キャリアショップのような手厚いサポートが必要となっているうえ、顧客接点の場で集めた情報を製品・サービス開発やマーケティングに活かせることはMVNOにとってもメリットが大きいというのが理由だ。
実際、楽天モバイル以外の事業者にも実店舗を積極的に展開する動きが見られる。FREETELのブランドでMVNO事業を展開するプラスワン・マーケティングは11月、1年以内に専売ショップ200店を開設する計画を発表した。また、LINEモバイルも2017年に独自のショップをオープンする予定だ。
出店には多額の費用がかかるだけに、実店舗を本格展開できるのは一部のMVNO事業者に限定される。店舗展開が難しい事業者のほとんどは「安さ」だけを売りにするしかない。MVNO事業者は現在300社近くあるといわれるが、本業を別に持ち、モバイルとの連携で相乗効果が期待できる事業者、あるいは強力なブランド力を持った事業者に収れんしていく可能性が高そうだ。