ユーザー企業が好むSD-WANは?このような動きの結果、SD-WANの提供形態も多彩になっていく。
整理すると、①キャリア回線にベンダー製品を組み込む、②キャリアが自前でSD-WANサービスを開発・提供する、③ベンダー製品をSIer等が販売する、④ベンダーがマネージドサービスとして提供する、⑤ユーザー自身がベンダー製品を買って自営で構築・運用するかたちがある。
では、どの形態が選ばれるのか。小野氏によれば、現時点では「キャリアが提供するサービスを好むユーザーは少ない」。調査結果(図表3)を見ると、前記の③④⑤、つまりベンダー製品を導入する形態が望ましいと考える企業が圧倒的多数だ(83.7%)。回線選択の自由度を手にして、通信事業者との交渉を有利にしたいという思惑が見える。
図表3 ユーザー企業はSD-WANをどう導入したいか? |
出典:IDC Japan「国内SD-WAN企業ニーズ調査」 |
ただし、ユーザー自身が拠点間網を適切に運用し、SD-WANのメリットを活かせるかと言えば、現時点では疑問符が付く。製品もユーザーもそこまで成熟するには、時間が必要だ。米IDCも、企業自身が管理する形態から通信事業者のマネージド型に回帰するという予測を立てている。
当面は、通信事業者のSD-WANが現実解になるのではないか。実際、NTTコムで技術開発部長を務める山下達也氏によれば、「自分で運用管理をするのは難しいから、マネージドサービスをくっつけたSD-WANサービスが欲しいというお客様が増えている」という。
ただし、同氏は「お客様は自分でもできることをわかった上で、より高いレベルの運用管理を求めている」とも語る。自前でSD-WANを運用するという新たな選択肢を手にしたユーザーからの厳しい要求に通信事業者がどう応えていくのか、注目される。