――6月1日にNECとカシオ日立モバイルコミュニケーションズが事業統合し、NECカシオモバイルコミュニケーションズが発足しました。
山崎 構想から1年余り、ようやくここまで来たかという気持ちです。いざ実現してみると、自画自賛するわけではありませんが、「いい相手と組むことができた」と思います。
というのも、両社にはNECにはないものがあるからです。カシオはCDMA2000方式の携帯電話を手がけており、国内ではKDDI、海外では米ベライゾン・ワイヤレスに供給しています。タフネスケータイ「G’zOne」やデジタルカメラ「EXILIM」のほか、腕時計や計算機などでも強力なコンシューマーブランドを持っています。
一方、日立には「家電の目」があります。KDDIから夏商戦向けに発売される「beskey(ベスキー)」は、「決め打ち」「流し打ち」「両手打ち」といったキーの打ち方に合わせてテンキーシートを取り替えられるようになっています。消費者の使い勝手を考えた発想であり、家電製品を作っている会社ならではの商品です。
NECがコンシューマー向けに商品を開発する際、注視するのはデザインの観点であり、「利用者がどう使っているか」という視点は少々欠けていたように思います。これは合併するまで気づかなかったことであり、合併効果の1つといえるでしょう。
――持ち味の異なる3社が統合することで、各社のブランドの活用など相乗効果が期待できますね。
山崎 3社のブランドが使える状況にあるのは有利なことです。商品のコンセプトとマーケットを考え、一番有利なブランドを利用していくつもりです。海外に関してはカシオの知名度が高いので、カシオブランドを活かした展開をすることになるかもしれません。
料理にたとえれば、今までは中華しかなかったけれど、洋食やイタリアンの材料も揃った状況です。それをどう料理するかは我々の腕次第です。深く考えずに混ぜるだけではおいしくなくなります。まさに腕の見せ所だと思います。
――今後、ドコモ向けにカシオブランドを展開したり、au向けにNECブランドを展開する可能性はありますか。
山崎 あると思います。ただ、ブランドの数が増えるとお客様も増える一方、混乱を招く可能性もあります。また、通信事業者に対する配慮も必要です。先ほどの例にならえば、使える材料が揃ったからといって、無作為に料理するとごった煮になってしまうので難しい問題です。